Epilogue:これからも私だけのヒーロー

「あのあと大変だったんだよな。帰りたくない!帰ったらまたのぞむがみんなのヒーローになっちゃうって車から降りてくれなくて」


 目尻を下げて優しく笑いながら、のぞむはコーヒーのカップをテーブルに戻す。


「泣かないで。俺はずっとお前の隣にいるって。どこにも行かない…そう言って落ち着かせてくれたね。あれ、すごく安心した」


 向かい合っている彼の手を取ってあのときのことを思い出す。あのあと彼の家に行って一緒にごはんを食べて…それから家に送ってもらって…。

 駐車場で急に不安になって泣きじゃくる私を抱きしめて朝日が昇るまでずっと手を繋いでいてくれた。

 朝日が私たちを照らし始めて、近所の人がゴミ捨てに出てくるのを見てやっと「仕事だ…」と我に返った私は、ずっと私につきあって車の中にいてくれたのぞむに平謝りをしたのだった。


「これからも俺は梨紗りさのヒーローでいられるかな」


「もちろん。みんなに自慢の私のヒーローだよ」


 係員の人に呼ばれて、一足先に立ち上がる彼を小さく手を振って送り出して、深呼吸をする。

 しばらくして、彼の好きな音楽と共に歓声と拍手が聞こえてきた。

 深呼吸をして私も立ち上がる。

 係員の人に連れられて来たお父さんが私をみて、まるで眩しいものをみたように目を細めた。


「結婚…おめでとう」


 涙ぐみながらそういうお父さんの腕に手を添えて、大きく開かれた扉をくぐった私は、真っ赤な絨毯の向こうにいる愛しの彼への一歩を大きく踏み出した。

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クリスマスだけのマイヒーロー こむらさき @violetsnake206

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