第15話
「やはりそうだ。おい、香川、見てみろ」杉野署に戻った森本 稔警部補は証拠物件保管室で取って来た凶器の包丁を香川 信之巡査部長に見せていた。
「見ろって言われても、この包丁で何故、犯人が左利きだと分かるんですか?」香川には森本の言わんとするところの真意がまったく分からなかった。
「ちっ、これだから最近の若い
「あぁ、なんか見た事ありますね。良く板前さんとかが使うプロ用の包丁がこんな
「本当に若い者はこれだから…良く聞け。普段、我々が一般家庭用に使っている包丁は文化包丁やら
「へぇ、本当だ。確かに傾斜が左側にしかついてないや。…えっ?これって右側にしかついてない。何で?」香川は検索した出刃包丁の写真と証拠物件の包丁を見比べておかしな感覚に
「やっと分かったか。良いかい?昔ながらの包丁って言うのは通常は持った時に
「なるほどぉ。そうなりますね。で?これの何が左利きなんですか?」香川はビニール袋に入れられた血痕の付着した包丁をまじまじと見つめながら聞いた。
「本当に感の悪いやつだなぁ。まぁ論より証拠さ。こいつを持ってもう一度先っきと同じようにやってみな」森本は袋に入ったままの包丁を手渡した。香川は先ほどと同じように包丁捌きをしてみせた。
「あっ!これ…使い
「じゃあ、やり難いかも知れんがそいつを左手に持ち変えてやってみろ!」森本に言われた通りに左手に持ち変えたてやってみた。すると香川はやっとの事で森本の言わんとするところを理解したと同時に、自分の
「何だよ。こいつ左利き用じゃんか。つまりは犯人は左利きだって事か」香川が言うように証拠の出刃包丁の鎬は右側についていた。
「まぁそうとも言い切れんが、少なくともそいつの持ち主は左利きだって事だ。つまり
「でも何だってこの事に誰も気付かなかったんです?鑑識だって監察医だって誰もそんな事を言っていなかったじゃないですか?」香川はやっと見えてきた真相に、興奮気味に話した。
「仕方ないさ。そもそも包丁に関する知識なんて大の男が持ち合わせてるなんて事、滅多にないからな。まぁ、せいぜいプロの料理人かそいつを実際に作ってる職人くらいだろうさ」森本は対照的に落ち着き払って話した。
「じゃあ森さんは何で分かったんですか?」
「まぁ俺の場合は学生時代に
「それにしたって良く気付いていましたね。普通は "パッと見" だけでその違和感には気付かないですよ」森本は香川の言葉に "痛いところを突かれた" 気分になった。
「まぁ…その何て言うか…その経験からたまにだが料理したりするんだよ。マイ包丁だって持ってるしな。普段から出刃包丁を見慣れていた事から違和感を持ったんだろうよ…
おい!こんな事、誰にも言うなよ」昭和の男は自慢げに話した後、赤面して言った。
「えっ?何でです?格好良いじゃないですか。料理をする男は最近じゃあ、モテるんですよ」香川はあっけらかんと返した。
「う…うるさい!我々の時代は "男子厨房に入らず" なんだよ!」時代錯誤を地で行く森本警部補は、時代のせいにして強調して言った。
果たして二人が捜査で導き出した新事実は栗林が隠している真相に辿り着けるのだろうか?
次の日、森本は包丁を鑑識課へ持っていき、持ち主の特定を急ぎ、香川は気になっていた白いガーベラについて調べ始めた。
果たして鑑識結果は吉と出るのだろうか?
白いガーベラを通じて新たな新事実は生まれるのだろうか?
真実へと導く鍵は、本当は何なのだろうか?
この後、二人の刑事は思ってもみなかった展開から、栗林の出した宿題の答えを知るところとなった。
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