第10話
森本 稔警部補ら、所轄の刑事達は、森本がピックアップした資料を元に、過去に栗林 源一郎が扱った事件により、被害を
「栗林さん、実はね、被害者の水野 道弘さんの
「もしあなたが水野を
栗林は瞳を閉じて、"フーッ" と
「忘れていました。水野さんは私に土下座するように
「では…あなたの言う通りとしましょう。その上で、立ち膝の状態で、相手の胸に包丁を心臓まで穿くほどの力を入れればどうなります?スラックスの膝が
「捨てました!あんなどこにでも売っているようなグレーのスラックスは、私は何本も持っています。押収品にも何本か、あったでしょう?それとも何ですか?防犯カメラから私が着用していたスラックスが押収品の中に、 "これだ" と証明出来る物が出て来たとでも言うんですか?」理路整然とした栗林の供述に、小林は栗林が "
「分かりました。今日はこの辺にしときましょう。でも…あなたの後輩達が、きっとあなたの嘘を
一方で、森本、香川両刑事は、杉野区の隣にある、中山区の仲田 邦子宅を訪れていた。仲田 邦子は、栗林が担当していた22年前の "丸菱銀行強盗殺害事件" の被害女性、
「栗林さん?あぁ、良く覚えています。母が亡くなって、葬儀も済ませた後、何度か来られました。時折、私達にお菓子やらオモチャなんかを買って来て下さって、目尻に深い
「それで、
「えっ?栗林さんに何かあったんですか?」邦子は森本の鋭い目線に
「捜査情報に関しては、我々には守秘義務と言うものがあります。仲田さん、これだけは言っておきます。貴女の証言に
「良くは分かりませんが、少なくとも、私にはそんな記憶はございませんし、父からも、そう言った話しは
「そうですか。また何か思い出すような事があれば、こちらまでご連絡をお願いします」そう言って、森本は名刺を手渡した。
「あの…最後に一つだけよろしいですか?」
「栗林さんですがね、こちらに来る際、花を持って来たりした事はなかったですか?例えば、白い花束とか」邦子は唐突な香川の問いに少し考えて込んだ。
「いえ、
結局は森本達には、これと言った情報がもたらされる事なく、帰路に
しかし、有力情報を持ち帰る事が出来なかったのは、森本達だけではなかった。署に帰った刑事達が、小林管理官に口々に報告する内容は、どれも栗林の人柄の良さを表すものだった。栗林に対し感謝や謝辞を
「皆んな、ご苦労だった。しかし私は
早めの帰路に就く事になった森本は、香川を誘い、居酒屋へと足を運んだ。
「なぁ、香川…俺の読みは見当違いだったのかな?」森本はいつもの
「僕はそうは思いませんね。栗さんは絶対に誰かを
「んー、なるほどね、お前はそう言った思いで事件を追ってたんだな。…なぁ、話しは変わるが、お前、何で最後に仲田さんに花の事なんて聞いたんだ?」香川に感心しつつも、後半は
「えっ?何でって…何です?刑事の感ですかね。刑事のじゃなかったとしたら、元相棒の感です。上手く言えないんですが、妙に引っかかるんですよね、あの栗さん
「ハッハッハ、お前…花が語りかけるって、メルヘンチックな乙女かよ。ないない、問題は俺がピックアップした事件が全てかどうかだ。何たって一晩でたった一人だけで調べたんだぜ。管理官も勾留延長するって言ったんだ。もう一度、明日から複数人で資料の洗い直しだ」香川の
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