第9話
森本と香川が防犯カメラ映像の検証を行なった次の日、全体の捜査会議が開かれた。
「皆んな、日々の捜査、ご苦労さん。
「管理官、検死の結果から、新たに不自然と言いますか、
「分かりますでしょうか?こんな
「で…それがどうしたと言う…ん?そうか!栗林は身長が170cm、その構えで刺すと、水野の腰か股間辺りを刺す事になる訳か」小林は倉本の言わんとする事を理解した。
「それが問題なんです。つまり、先っきの構えで水野を刺すとなると、おおよそ220cmくらいの大男だと言う事になるんです」小林は目を見開いて、周りの刑事達を見た。
「他に意見がある者はいるか?」そこに香川が手を上げた。
「例えばです。このように、顔の辺りで構えてみればどうでしょう?」香川は倉本同様に、ボールペンを使って、野球のバッターが構えるように、
「藤原署長、あなたの身長は?」立ち上がった藤原に、小林は聞いた。
「私は177cmでありますが、それが何か?」藤原には小林の言わんとするところが分からずにいた。
「おい!この中に、身長が160cmくらいの人間はいるか?」小林は
「はい、私は162cmですが」今度は
「んー、15cm差か…まぁ良いだろう。柊木君、少し前に出て来てくれるか?」小林は柊木に手招きしながら言った。
「良いか、先っき香川君がした事と同様に、藤原署長に、このボールペンで刺すように、やってみてくれ」そう言って、小林は、自身のボールペンを柊木に手渡した。柊木は小林に言われた通りにすると、ボールペンは藤原の鼻の辺りを指し示した。
「んー、鼻の辺りで上からの角度が30°となると、口の辺りくらいになるな。森本警部補、これをどう見る?」二人を見ながら、小林は森本に意見を求めた。しかし返事がない。
「おい、香川。森本警部補はどうした?」小林は香川の隣に座っているはずの空席を確認して、香川に
「すみません。森本さんとは昨日、今日の会議の事を確認した後で別れたのですが、朝から見当たらず、電話したのですが、電源が切れているのか、
「仕方ない、他に意見がある者は…」小林が言いかけた時、会議室のドアが開いた。と同時に、全員の刑事達がドア入り口に目を向けた。
「いやー、すみません、調べ物に夢中になり過ぎて、時間も忘れてしまって」そこには昨夜のスーツ姿をヨレヨレにさせて、
「森本警部補、困りますよ。あなたらしくもない。で?調べ物とは?」警察庁入庁当時に、ここ杉野中央署の署長だった小林は、森本が優秀な刑事である事は、良く
「いやー、苦労させられましたよ。私はね、この事件の真相は、栗林の過去に
「こ…この事件らが何だと言うんです?何か共通点でもあるんですか?」小林が見た限りでは、どの事件も、強盗(殺人)罪、殺人(
「えぇ、一見すれば共通点はありません。しかしね、私はある一点にのみ集中して調べました。それは…どの事件も、事件に関係のない、第三者が犠牲になって亡くなってしまってるって事です」森本の発言に、室内はざわついた。
「全員、
「で?その第三者が犠牲になった事と、今回の事件がどう結ぶって言うんですか?」小林は立ち上がり、森本の方へ歩み寄った。
「管理官、私は栗さんの気持ちになって考えてみたんですよ。この事件の裏には、水野の連続強姦が何らかの形で関わっています。私にも娘がいますがね、その娘が野心を持った男の
「分かった、分かりました。しかしだよ、森本警部補、それが分かったとして、栗さんが犯行を犯していないと言う証拠は出るのか?新たな真犯人を
「管理官、大丈夫です。ここにはかつて栗さんから様々な教えを
「皆んな!この資料をコピーして渡す。各人で手分けして、何としても明日までに
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