恋の魔法

抹茶

一般魔法論とリア充魔法論




~前書き~


 詰め込んでみました。少しだけ。

 


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 淡い太陽の陽射しが、新しい命の育みを微笑むように照らしていた。小さなテラスにある椅子に僕が腰掛けていると、彼女は僕のすぐ隣に座った。

 どうしてそこに座るんでしょうか?なんて聞こうとも思ったけれど、僕は陽射しの気持ち良さに諭されて止めた。


 何だか、彼女が微笑ましそうに僕の顔を見ている。なんでだ。そんな慈しみの目で見ないでほしい。僕は立派な男性だ。


「ふふ~ん・・・・・・・♪」


 上機嫌そうに、彼女は僕の顔を見て鼻歌を口ずさむ。

 

「どうしたんですか?」

「ん~?別になんでもないよ~」

「・・・・・・・・・・・・」


 彼女の顔は、とても嬉しそうで、どこか小悪魔的。その姿が、家の庭なのだけれど誰かが見ていたらと思うと少し嫉妬してしまう。


「大丈夫だよ、私は君だけのものだから」

「・・・・・・・・・・!」


 当てられた。それが悔しくて、でも、そんな事を言ってくれる彼女が嬉しい。まったく、彼女は僕に――そうだ。


「・・・・・・・魔法みたい、ですね」


――そう。魔法みたい。


「そう?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・確かに、そうかもね」


 少し疑問そうに言う彼女に、僕は彼女の事を抱きしめてみた。すぐ隣に居た彼女は、先程まで顔を洗っていたからか良い匂いがした。

 甘くて、ちょっとくすぐったい臭い。そんな臭いを堪能するように、僕は少しだけ力を込めた。


 その結果として、彼女の先程の言葉に繋がる。


「他の男にやられても、気持ち悪いだけだもんね」

「ええ、ですので、魔法みたいだな、と」


 彼氏で、彼女。それだけの関係なのに、なぜか特別に思える。口約束の、しかも拘束性はまったく無い。

 言葉として存在する訳でも無い、そんなものなのに、それだけで心躍る。


 世間一般の魔法は、火の球を撃ったり、非現実的な第三の概念を利用した超常現象の事を指していると思う。

 たまにニュースでも見かける、異世界ものの小説だったりすると、最近はもう魔法が無いとやっていかないくらい。

 ネット小説にそこまで興味が沸かない僕でも、それくらい周知する程にベターになっているんだと思う。


「名付けるなら、何でしょうね?」


 まだ、抱きしめたまま僕は問う。彼女の柔らかい体は、抱きしめているのに抱きしめられているように僕の体を包んでいる。

 昇天しそうな程に心地良い。そうか、彼女の体には僕特攻の麻薬が掛けられているんだと思う。

 

 それなら、僕はもう立派な麻薬中毒者だ。いや、重毒者かもしれない。

 彼女が居ない世界に、僕はきっと居ないと思うから。


「そうだねー、やっぱり、定番で言ったら『恋の魔法』でしょ!」


 彼女は、すぐにそう答えた。他人から見ても、きっと分かるくらいに上機嫌。

 喜びの最高潮かな?なんて考えてしまう。

 これも、きっと『恋の魔法』なんだと思う。彼女の事が好きで、愛しているから。


 ただ一緒に居られるだけで、人生の全てが幸せで満たされていくような、そんな時間だから、魔法。

 恋だって、立派な超常現象だと思う。


「そうですね、なら僕達は互いに『恋の魔法』を掛けて、もう一生離れないんです」

「呪いかな?」

「なら、『恋の呪い』にしますか?」

「んー。嫌かなぁ。じゃあ、やっぱり『恋の魔法』にしよう!」


 元気な彼女は、春の訪れを誰よりも先に体感している。今を自然に、全力で楽しむ。彼女の顔は、いつでも晴れ渡るような笑顔が良い。


「ふふっ」

「どうしたんですか?」

「私は、君の事が堪らなく大好きっ!」

「・・・・・・・・・・ズルいですね。不意打ちは苦手です」


 卑怯だと、最高だと、もっとやってくれと、僕の中で叫ぶ。その全てを抑えても余りあるくらいに、僕の中に幸せが満ちていく。

 何もしてないのに、たった一つの文章で、僕はこんなにも幸せになれる。


「私特製、『恋の魔法』を発動させるための詠唱だよ」


 彼女は、僕からは見えないのにドヤ、って顔してると思う。可笑しいな。誰も見てないのに。

 だから僕も、今この瞬間に浮かんだ、僕だけの、彼女への特効魔法を使おうと思う。


「うん、幸せだよ。ありがとう・・・・・・・・」

「・・・・・・・・んぅっ?!」


 僕だけの、君へ贈れる最大の”魔法”。言葉では無く、行動で。


「・・・・あ・・・・・・・ぅ~・・・・・・・」


 上気したように、彼女は蕩けたような表情でペタリと力を抜いた。まるで「きゅぅ~~」と言っているようで――可愛いらしい。

 僕は、そんな彼女を見て微笑む。


 『恋の魔法』


 とっくの昔に、深く深くその魔法に罹ってしまった僕。けれど、それは幸せの魔法。誰かと、そして自分も幸せになれる、そんな魔法。

 僕にとっては、そう思う。そうだろう?


「ね?大好きだよ」

「はぅっ~~!」


 


 柔らかい日差しが、また、一年の陽気を携えて微笑む。僕と、彼女。たった二人だけの世界だけれど、それだけで完結するくらいに満ち溢れた世界。

 少しだけ吹いた穏やかな風が、僕の頬を優しく撫でた。

 

 空を見上げれば、そこには燦燦と佇む太陽が在る。変わらずに。いつまでも。

 




================


~後書き~


 キュンとしたり、幸せな気分になったり、ほのぼのしたり・・・・・・・・・・・・そんな風に、日常的な幸せを感じ取ってくださった時には、是非☆やレビューを頂けると幸いですっ!

 読者の皆様の意見が最大の方針となり、原動力となります。


 私の拙作を完読頂き、ありがとうございますっ!

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恋の魔法 抹茶 @bakauke16

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