デジャヴ

ふとした瞬間頭によぎる光景がある。それは今から数秒後に起こるかもしれない事や、あるいは起きていたかもしれない可能性の一つ。

街中のポスターを見る。私はこれを見たことがある。

しかしこれの掲示日は今日からだ。今より前の時間帯に見た?いいえ、私は起きて準備をして家を出てたった今駅についたところだ。

じゃあ、どこで見た?答えは夢だ。

私の夢は奇妙なものだ。数年越しの予知夢とでも言おうか。小学校三年生の夏の夜に見た夢。あの夢の中に通行人はいなかった。けれどもこの街並み、目の前のエコバッグのキャンペーンのポスター。間違いなく、一字一句描かれたイラストも同じである。

改札を通る。なんとなく、エスカレーターから人が落ちてくる気がした。ここでスマートフォンを手に取る。

「ドタドタドタ」

キャリーケースを抱えたサラリーマンが落ちてくる。私はすかさず電話した。

「火事ですか救急ですか」

「救急です」

「向かう場所の住所を教えてください」

「○○駅構内です」

「救急車出発しますしばらくお待ちください」

これが何かの訳に立ったことはあっただろうか。

たいていがこのように悪い予感であり、私にとっていい事をもたらさない。

ふと重力が歪む感覚がする。上下がおかしい。左右も何か違う。

はっと気づく。そう、私は寝ている。

気付いた時には家だった。時計を見る。時計はいつも私が起きる時間を指している。

いつも通りの準備をし、いつも通り出発する。

見覚えのある通行人、ポスター、キャリーケースのサラリーマン。

「ドタドタドタ」

どこからが現実でどこまで夢か。この世界は接続している。いつか私はこの世界に溺れてしまいはしないだろうか。

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塵も積もれば鈍器となる 南高梅 @love_scarlet_2323

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