七色の宝物

Len

あの海で



藤田 武(ふじたたける): 小学生の時に親の都合で1年だけ 離島でくらす。その時不思議な少女に出会う。都会っ子な生意気だけど好奇心が強い。(チビ武)


マーメ: 武がつけた少女の名前。自分のことを人魚だという。名前を人間の言葉ではいえず 武がマーメイドからマーメとつけた。武より年上(人魚だから)見た目は少女。


七海:武と同じ高校生


.........

武N:日に日に暑くなり、半そでの人が増えてきた。日差しも強くなって、眩しく感じるほどだ。

この時期になると思い出す。オレが、小学生の頃、親の都合で一年だけ小さな南の島に住んでいた。

都会で暮らしていたオレが、ポンと田舎の島にいってすぐなじむわけもなく、学校でも都会から来たと珍しいものを見るように、だけど中々打ち解けられなかった。それはオレが生意気で、田舎を見下していたひねくれたガキだったからだ。

はじめは好奇心で、親の都合をいいように思ってた。引っ越してすぐ、都会とのギャップとゆったりした時間に、退屈さを覚えていった。


SE:てくてく歩く足音

チビ武:「あ~あ。田舎ってつまんないな。父さんと母さんは小さいころに一度は自然の中で過ごせるいい機会だっていってたけど、やっぱりついてきたの失敗かな。遊ぶところって海しかないし、いやいや、島の周り海だけだ・・・。塾もいかなくていいし、ラッキーだと思ったのに。たいくつ~・・・。」

SE:波の音が聞こえてくる

チビ武:「ふぁ~、またココきちゃった。家に帰ってもTVのチャンネルも少ないからつまんないし、宿題なんて簡単ですぐ終わっちゃうし、貝殻拾いも飽きたんだけどな~。まぁ、ぼーっと時間つぶすかぁ。」

SE:波の音と、木々を風が吹き抜ける音

チビ武「・・・おっと、眠くなる。ウトウトしてた。たーいーくーつー。」

SE:水の跳ねる音

チビ武:「うん?魚かな?魚がはねた音か。釣りも飽きたしなぁ・・・。」

少女:「ちょっと」

チビ武:「ん?なんかの声?気のせいか。」

少女:「ちょっと!あんたよ!」

チビ武:「え?!どっから聞こえるんだ?海からのような気もするけど・・・まさかね。」

少女:「海からです~。こっち!」


武N:声がする方に目をやると、水面から飛び出した岩の上で、一人の少女がこちらを見つめていた。ただ、下半身は水面にあり、上半身だけ岩にもたれかかるように頬杖をついて不機嫌そうな表情だった。

それが、不思議な少女と初めて会った時だった。


少女:「さっきから聞いてたら、文句しか言わないのね、あなたって。退屈だーとか、そりゃ、何もせずにそこにいたらそうだわ。他の子たちは、自分たちで遊びを考えて、楽しんでるってのに。へんな子供。」

チビ武:「うわぁぁぁ、海から人が出てきた!お化け?!」

少女:「ちょ、お化けとか、失礼じゃない?ホントに変な子供ね。見慣れない子が最近よく来るな~って見てたら、あなたどこから来たの?島の子供じゃないの?」

チビ武:「・・・お化けじゃないの?なんで海から出てきたの?」

少女:「だから、私の質問に答えなさいよ。そしたら、教えてあげる。あなたどこから来たの?」

チビ武:「えっと・・・。最近この島に来たんだ。元々は関東から来たんだよ。えっと、東京ってしってる?」

少女:「あら、都会のから来た子なのね。東京〜知ってるわ、いったことがないけど。ただあまりいい評判聞かないのよ、あっちの海は・・・。」

チビ武:「で、えっと、君は誰なの?妖怪?」

少女:「あ、そうそう、あたしね。う~ん、人間からしたら、妖怪っていうものかしらね。海に住んでるの。あたし、ここの海がお気に入りなんだ。都会の海って、色々噂、聞いたけど汚染とかなんだとか、あと青くないんでしょ?」

チビ武:「え、よ…妖怪なの?やっぱり人襲ったりするんだよね。オレを食べようとしてるか?」

少女:「待ってよ、襲うならもうさっさと襲ってるし、それにあたしたちは、君たち人間みたいになんでも食べることはしないわ。まぁ、おなかがすいてたらわからないけど。とにかく、むやみやたらに食べないわよ。それより、さっきからひどくない?子供のくせに、かわいげがないわね。」

チビ武:「お、お前だって子供じゃないか。オレは島の子より色々知ってるし、塾だっていってたし勉強もできるんだぞ。」

少女:「うわぁ~、かわいげないし、生意気な子供だわ~。都会の子供はそうなの?勉強できるからなによ。あたしは見た目子供でも、君よりずーっとながく生きてるんだから、もっと色々な事知ってるわ。」

チビ武:「お、お前・・・海に住んでるっていったよな、人魚なのか?」

少女:「そうね、君たち人間はそう呼んでるね。うん、人魚。」


武N:少女の姿をしたその子は、あっさりと自分を人魚だと認めた。

きっと、だれも信じてもらえないかもしれないが、オレは小さいころ人魚と出会ったんだ。これは、その時の思い出話。

はじめは怖かったが、少女の姿で無邪気そうな笑顔を時より見せるその人魚に、恐怖心より好奇心が一気に高まり、気づくと色々質問したり、話し相手になっていった。


少女:「へ~、親の都合でね。人間も大変ね、でもいいじゃない。ここの島の子はいい子よ。あたしをみつけても妖精さん、なんてかわいく言ってくれて、遊んで帰っていくの。素直で明るい子ばかりよ。」

チビ武:「でも・・・オレ、まだ友達できないし・・・。」

少女:「それは、君が都会から来た!みたいな生意気な子だからよ。素直になりなさいよ。」

チビ武:「う。なにも言い返せない・・・。なんで知ってるんだ?で、お前はなんて名前なんだ?」

少女:「あたしは君より物知りよ。ところで、そのお前って呼び方、きになってたのよ。かりにもあたしのほうが年上なのに。う~んでも、名前ね、人間の言葉ではあらわせないの。今会話しているのは、島の人みてて、覚えたんだけどね。だから、適当に名前つけて。君はなんていう名前?」

チビ武:「そっか、海の中じゃ口で話せないのか、どうやってはなしてるんだ?あ、オレの名前は武(たける)だよ。」

少女:「タケルね、覚えたわ。海の中じゃ~、イルカたちと同じように会話しているわ。しってる?」

チビ武:「あ、イルカは何か、特別な音波で会話するって聞いたことある。だから名前は人の言葉にできないのか。」

少女:「そうそう、イルカたちには通じるんだけど、人に名前いっても聞き取れないらしいの。だからって、お前って呼ばれるのはいやよ。」

チビ武:「う~ん、人魚ってよぶのも変だし。英語でマーメイドっていうんだよな、じゃぁ、マーメはどう?」

マーメ:「マーメイドの発音が違うけど、まぁいいわ。マーメね、うん。それでいいわよ。」


武N:オレはその少女の人魚に名前をつけた。簡単すぎる発想の名前だったが、それは子供だしゆるしてくれ。

マーメはいろんな国にもいったことがあるらしい、海は広くてつながっているから、ほかの国にもマーメの友達はいると。ただ、こども以外には話しかけない、大人の人間は捕まえようとするから見つからないようにしていると。

マーメと知り合って、海に行く時間が楽しくなっていった。

そのうち、学校でも自然と話し相手が増えていった。マーメと遊んだ子供が、オレの事もきいて一緒に会いに行こうと誘ってくれるきっかけにもなった。

子供だけの秘密を共有することで、不思議な友情が芽生えた。島の大人はしらないのか?と友達になった子に聞いたことがあった。

答えは知っているだった。面白いことに、島の大人たちが子供の頃はあっていた、大人になると見れなくなる海神様と呼ばれているらしい。だから、島の子供がマーメにあったというと自然と受け入れ、海神様に会えたんだね、よかったねと普通に会話が成り立つらしい。

オレは、都会ならそんな風にはならないだろうなと、子供ごころにこの島はいいところだと思い始めていた。

子供の一年はあっという間だった。島の暮らしに慣れていった頃に、親の仕事でまた元の土地に戻ることになった。とはいっても、最初からそう聞かされていたのだが、オレは一生忘れないとクラス皆と言葉を交わし、引っ越しの前日マーメと出会った砂浜に行った。


SE:波の音

チビ武:「マーメ、いるんだよね。オレ、明日島をでるよ。お別れをいいにきた・・・。」

マーメ:「・・・」

チビ武:「マーメ、返事してよ。」

マーメ:「な~んて顔してるの?タケル。この世の終わりみたいに。」

チビ武:「だって、わかってたけど、一年しかいられないって。けど、せっかくみんなとも、マーメとも・・・。楽しかったのに。」

マーメ:「この島の子たちとも、年が二けたになるころにはあたし、もう会わないんだよ。それに、島を出ていくのはタケルだけじゃない、ここの子供たちだっていつか出ていく。あたしは、子供にしかみえない妖精さんなの。タケルは元の場所へ帰るけど、そこにも海はあるでしょ?海はつながってるって言ったじゃない。」

チビ武:「けど、マーメは都会の海、苦手だって・・・。」

マーメ:「人がいっぱいいるもんね、気が向いたら、都会の海にもいくかもしれないよ。」

チビ武:「マーメがそういう時、絶対来ないよ・・・。」

マーメ:「生意気だったタケルが甘えん坊になっちゃった~。」

チビ武:「もう、なんでそうやってからかうんだよ。明日帰っちゃうのに、もういいよ。」

SE:走り去る足音


武N:オレはそのまま帰ってしまった。きっとマーメはしめっぽい別れをしないようにしたかったんだろうけど、その時のオレは本当に子供で、駄々をこねて、いじけて別れてしまったんだ。


七海:「ほ~、そのマーメさんが武の初恋相手か~。なんかやいちゃうな。」

武:「ちげ~よ、マーメは、見た目子供だったけど、年上だぞ?実際いくつかはわからないけど。聞いたら、レディーに年きくのは失礼だぞって。」

七海:「でも、それがきっかけでこの間の論文発表、環境問題について、だったんでしょ?それに将来の夢も・・・。」

武:「そうだな・・・。ここに帰ってきて、海見たときショックだったんだ。今まで気づかなかったけど、こんなにもって。なんとかしなきゃと思ったんだ。将来の夢か~、変かな?イルカのトレーナーなんて。」

七海:「イルカと会話、したいんでしょ?マーメさんの事きくの?ってのは冗談だけど、私はあの論文で感動して、それがきっかけで今こうして受験勉強、一緒にできてるんだもん。私もマーメさんに感謝しなきゃ。」

武:「七海にこんな昔ばなし、笑われるかな?って思ったよ。人魚なんているわけないって。」

七海:「笑わないよ。だって、私も海が好きだし、よく田舎のおばあちゃんのところ行って、海で遊んでたの。そのときね、見つけたの、不思議なもの。ちょっとまって、お守りにしてるの。」

武:「不思議なもの?」

七海:「うん、うろこっぽいんだけど、けど魚の割には大きいし、色がね、すごくきれいで七色に光って見えるの。ほらこれ。」

武:「これって・・・。」

七海:「武、マーメさんのうろこってこんなキレイだった?」

武:「オレの宝物、ほらこれ。マーメが持っとくといい事あるって。」

七海:「え...ウソ。本当に人魚のうろこだったんだ。もしかしてマーメさんの?」

武:「どうなんだろうな。マーメの考えることはわかんねぇ、オレより年くってるからな。」

七海:「こら、それが失礼だっていうの~。」


武N:部屋で勉強しながら、休憩の合間にした昔話。

人魚には予知する力があるとどこかの本に載っていた。もしかしたらマーメは今の姿、これから先まで知っているかも知れない。

SE:波の音

マーメ:「そうそう、あたしはタケルよりずーっと物知りよ。またココに来ることもね。」









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七色の宝物 Len @norasino

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