【幕間】マジマ
マジマ3 ─ 怠惰
オレはコレが初めての謹慎だった。……どうやら必須タスクは何も割り当てられず、任意タスクについてはコスパ最悪の『店番』のみ。マジでなんもすることがない。
グレードBのパブリックスペースに行くこともできなくなっていた。せめて図書館が使えれば……ジェスチャーを行い、ライブラリを起動してみるが、暇つぶしに使えそうな物はインポートされていなかった。わかってりゃ事前に準備したんだが、まぁ仕方ない。
──マジで碌なタスクがない、つまり1日で使えるオレのマナが有り余るわけだ。グレードBになった際に与えられた個室には、簡易的な調合と精製の道具はある。
……まぁ、アレを作れってことなんだろうな。
心機一転、いっちょやってみるかね、と、
──10分後。
「あぁぁぁーマジしんど!!やってらんねぇよ!」
カラン、と匙を投げ捨てると、オレはほぼ変化のない水を恨めしそうに睨んだ。
……こんなメンドクセェ物、小ビン一本作るのに何日かかるか分かったもんじゃない。退学になった学生が、実は地下労働でコレを作らされてる、って噂がマジなら、オレは半日で心が折れる自信があるな。
ベッドに寝転び惰眠を貪る。ダラダラと無駄に時間を過ごしつつも空腹で目が覚め、適当に飯をポチる。
ポン、と机に届いた『
──気がついたら翌日の昼になっていた。すっかり寝過ごしたが、ぶっちゃけその方がヒマな時間が減るのでたいした問題ではない。
ベッドに横になったまま、ぼーっと虚空を眺めるオレは、天井に向かって両手を伸ばす。優しくニギニギと空気を揉みながら、記憶から柔らかな感触を反芻した。……レイラは今頃どうしてるだろうか。
こうも暇だと、無性に誰かと話がしたくなる。部屋にいたって、どうせすることがないのだ。オレは話し相手を求めて、タスクをすることにした。
今日も1つだけ存在する任意タスク『店番』にチェックを入れて申請する。と同時に、すぐに入室許可が出た。パパッと身支度すると、オレはゲートを開いてくぐった。
オレの入室を察知してか、灰色の猫耳がピクッと動き、見張り机に突っ伏していた
「……にゃ、マジマ?珍しいにゃ。どーしたんにゃ?」
人が来て嬉しいのか、尻尾をピンと立てている。
「ちょっと、やらかしちゃいました。しばらく謹慎食らって、マジですることがないんすよ」
「ふぅーん。あの泣き虫だったマジマがにゃー。もうそんな責任のあるタスクやってるんにゃ」
ガキの頃から見られていることもあって、どうしても
「ルーシアさんは、相変わらずゴロゴロしてるんすね。暇でしんどくなったりしないんすか?」
「んーにゃ?ネズミ取って、釣りして、時々ごちそう。ずーっとこのままで全然幸せにゃあー」
そう答えるその口から、牙がちらっと覗く。人化してたって所詮は猫なんだよなぁ。気楽でいいもんだ。……釣りなんかできる場所が
「……んにゃ?……マジマ……」
何かに気がついたのか、ルーシアさんはガタッと立ち上がり、赤い首輪につけた鳴らない鈴が揺れる。そして机をくるりと跳び越えたかと思うと、しゅるっとオレの後ろに回り込んだ。
ガシッ、と首と肩が掴まれ、すんすんと匂いを嗅がれる。……ヤバイ。吐息が首にかかり、やわからな胸が背中に当たる。
──そしてトドメとばかりに、ルーシアさんはオレの首すじを、そのザラザラな舌でペロン、と舐めたのだった。
「ちょちょちょっ!何するんすか!」
流石に我慢できず、オレは慌ててルーシアさんを振り払うと、振り向いて対峙した。
ジト目でオレを眺めるルーシアさん。不機嫌そうに、その尻尾が左右に振られる。
……そして、低い声でこう言い放った。
「マジマ、女の子と交尾したのかにゃ」
──いっそ殺してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます