マジマ2 ─ 責任
「結論から言わせてもらう。マジマ=レークス。お前から
──は?
「いやいやいや!ちょっと待ってくださいよ!」
確かに、オレは
……だが、いくらなんでもペナルティが重すぎだ。それに、オレだって文句を言いたいことがあった。
「父親を見つけれなかったのは、マジすんませんでした。……でも学長、あの時セッションをぶった切ったのは、他ならぬ学長じゃないすか!マジ何なんすか?アレが無けりゃ、すぐに現地に行けたし、父親にも会えたハズでしょう!」
学長は黙ってオレの抗議を聞き終えると、指一つ動かさず、静かに答えた。
「なるほど。いい質問だ」
学長は座ったまま椅子をくるりと回し、オレに背を向けた。
「まず、父親を探し出せなかったことは、大した問題ではない。問題は、場所だ」
場所が問題だ?
──オレは今まで、世界にあんな場所があるとは思ってもみなかった。
路上に転がる、齧り尽くされ白骨化した死体。風が吹けば壊れるような、ボロボロの建物。そして、そこら中を跋扈する大量の
「かく言う私も、あれほど汚染された場所だとは思っていなかった。ゲートを繋いだ瞬間、こちらに吹き込んできた瘴気を、私は攻撃と誤認し、接続を緊急切断してしまった」
椅子をもう半周、くるりと回した学長は、手にしたペンを弾いてキンッと鳴らした。すると、オレのタグに、ライブラリに『カン・サルター・ヨクラートへの
……オレが
「セッションを切った事に関しては、私の落ち度だ。そこは謝罪しよう。……だが、その後にお前がした事は、あまりに迂闊だった」
──開いたレポートに書かれていた内容に、オレは、どろりと脂汗をかいた。ぐらりと足元が揺らぐ。グラフと数字が並ぶ資料の先頭に、強調して書かれていた概要は、こうだった。
『カン・サルター・ヨクラートへの
学長は、机を両掌でバン、と叩いて立ち上がった。
「焦っていたのはわかる。だが、
オレは、ガクガクと全身の震えが止まらなかった。いつの間にか、オレの正面に来てしゃがんでいた学長は、オレを下から見上げながら、話を続ける。
「最近のネズミどもは本当に賢い。
「……」
「根を張り直すまで、どれだけの時間とコストがかかるか知りたいか?」
「……」
「私が何件の取引先にお詫びをしなければならないか教えてやろうか?」
「……」
ダメだ……オレは責任の重圧に押しつぶされそうだった。しかし、これだってレイラに責任の半分はある。だが、これ以上余計なことを言ってレイラの顔に泥を塗るわけにはいかないと思ったのだ。
「学長……すみません、オレ……」
続ける言葉が見つからず、黙り込んだまま震えるオレの肩を、学長はポンと叩いた。
「だが、起きてしまったことは仕方ない。学生は存分に過ちを犯し、そして学ぶものだ。……大昔には、
学長はコツ、コツと歩きながら、優しく、落ち着いた声で続けた。
「さすがに相応のペナルティは受けてもらうが、道が閉ざされた訳ではない。今後の進路については、謹慎中に頭を冷やしてから、焦らず自分で考えるといい」
机に戻った学長は、ギィッと椅子に座ると、次の便箋を取り出して、詫び状の書き綴りを再開した。
学長マジあったけぇ……オレは安心感から、ようやく涙が溢れた。
……しかし、ペンを走らせながら、学長はニヤッと笑うと、こう付け加えた。
「煌びやかな街に浮かれて、お楽しみだった事自体は、学園としては咎めるつもりはない。ただ、そちらの責任も取るべきだろうな」
……全部お見通しかよ。いっそ殺してくれ。
「私からは以上だ。他に何か聞きたいことはあるか?」
「いえ、マジ大丈夫っす……スンマセン、マジ
ありがとうございました」
──オレはゴシゴシと腕で顔を拭うと、キュッと立ち上がって学長に会釈をし、逃げるように走って学長室を出ていった。
「……目をつけられなければ良いが」
来客のいなくなった学長室に、ポツリと言葉が漏れた。
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