本作の著者・ネギま馬さんが「二十歳の原点」に感銘を受けていたことはエッセイを読んで知っていたので、その一節が登場した際には「えらく素直だな」とちょっと意外に思いましたが、まさに高野悦子をなぞったようなヒロイン・名波が自殺をし、主人公は遺され、その墓参りで幕を閉じるという筋書きはまさに、別の視点から見た「二十歳の原点」という気がいたしました。
ただ少し、「未来が見える奇病」という設定が余り効果的に機能していない点が惜しいと思います。このSF的な設定が生んだドラマは、痴情のもつれと友情の破局。そしてヒロインが母の死を予見し、自殺を決意するという、余りに普遍的なもの。
しかしこのそれぞれのドラマが余り上手く絡み合っておらず、それぞれの行動の非常に表面的かつ誰にでも理解できる単純な動機付けに過ぎず、それならば「世を賑わせ次々に自死を生んでいる奇病」という設定は大げさに過ぎ、「二十歳の原点」というアイテムは独創性を削ぐものにしかならない、と感じてしまいました。
日常の中にある「不可解な自死」に焦点を置くのか、誰もが安易に同情できる「仕方のない自死」に焦点を置くのか。もう少し構想を錬り直せば、本作はより明瞭なテーマを持った名作となり得るのではないかと思います。