第200話 戦闘態勢に入りたい
「エリックさん!」
「おお、海彦殿。族長達は自分の部族のとこへ行った。戦闘部隊の編成じゃ、アルザス騎士団はアンドレに任せてある」
「行動が早いすね。みんな流石だ」
「いやいや、前もって海彦殿が考えてくれた、
「いえいえ、みんなが団体行動訓練と模擬演習をやってくれてるからですよ。真面目にね」
過分に褒められると照れくさい。
いつも通り元ネタは百科事典なので、俺は軍事教本を伝えたのにすぎないのだ。
ただ、あくまで基本。魔物は頭も良く強いので、教科書通りの戦い方では勝てない。
モブとは違うのだよ、モブとは。
なので、亜人の特性を生かした作戦を考えてある。
『こちら弐号機。魔物軍団なおも南下中、会敵するのは夕方頃』
『こちら参号機。偵察写真を現像するのに、一旦下に降りる』
「本部了解。注意して偵察を続けてください」
無線のおかげで敵の情報はリアルタイムで入ってくる。
俺達はテーブルに作戦図と駒を置いて、侵攻状況を確認する。
「アルテミス湖の北東にある平地からと、川から攻めてくるようじゃのう」
「ええ、エリックさん。これだと二正面作戦になりますね。あとは敵の数を知りたいとこですが……」
ちょうどそこに、斥候からの連絡が入る。
『王に伝令! 索敵したところ、魔物の数およそ1200!』
「……かなり多いのう。ご苦労じゃったハンス、無理はせず部隊を引き上げるとよい」
『おおせのままに!』
「族長達にも伝えましょう。船での戦いは例の作戦でいくとして、地上はオーク・ドワーフ・アルザス騎士団で迎え打ちましょう。ただ、最初は陣地にこもります」
「防御戦じゃな。前線陣地はできとるから、いよいよ本番じゃ」
「あとは昼飯を食っておきましょう。腹が減っては戦に勝てぬ、です」
「うむ」
戦闘準備は着々と進む。部隊編成が完了したとこで、飯を食って休むように言った。
まだ魔物軍団が来るまでには時間はある。
俺とエリックさんは、前線に近い城塞へと本陣を移動させることにする。
まだ完成はしておらず防備は不十分な高台だが、湖と陸地の両方を眺めることができるので、戦況を見るにはうってつけの場所だ。
ここまで攻め込まれるようなら戦は負け。もっともそうはさせない、絶対に食い止める!
族長達も集まってきて、作戦の打ち合わせをすることにした。
偵察写真も届いて、敵の姿形も分かる。
「また、見たこともない魔物じゃのう」
「うむ」
「武装したゴブリンが主力のようで、他に
「だとしても戦うだけじゃ。なーに、海彦殿の作戦があるから負けはせんよ」
「そうじゃ、味方の方が数は多いし、儂らも鍛えてきたからのう」
「魔物は叩き潰すでござる!」
「上手くいくと、いいですが……」
知恵を絞って作戦を考えては見たものの不安はある。戦は何が起きるかわからないからだ。
あとは女神様に祈るだけである。
作戦の詳細を詰めたあと、族長達は自分の部族のとこへ戻った。
そして隊長らに作戦を伝え、戦士達も理解した。戦意は高まる。
「やってやる! 殺ってやるぞー! 新型の魔物がなんだ――――!」
その頃、魔物軍団の動きが一時止まっていた……。
「炊煙が上がってやがる。人狼の時と同じだ、やっぱりバカじゃないな」
「ええ、腹ごなししてから攻めてくる気でしょうね」
俺達は城塞上の
フローラとハイドラは本陣の守り。女達で前線に出るのは、アマラとシレーヌだけである。
今回は敵の数が多く、危険だから止めたんだけどね。
「アマラは戦うのだ! 魔物は殺す!」
「うんうん! 皆殺しデス!」
このコンビなら、そう簡単にはやられないとは思うが心配だ。
俺は暴走しないように、注意だけしとく。
「アマラ、危なくなったら直ぐに下がれよ。戦いはまだ続くからな、今日で終わりじゃない」
「わかったのだ」
そして二人は船で待機してる。武装船団とボート部隊は湖に出て、敵が来るのを待ち構えていた。
水上で戦うのはエルフ・ダークエルフ・獣人達で、人魚達は水中からのサポートだ。
ドワーフは泳げないので、オークと一緒に陸戦をやってもらう。
ホビットは治療などの後方支援。兎族は伝令と負傷者を運ぶ、衛生兵をやってくれることになった。
意外と力もあり、人を担いで走っても早い。やはり亜人は強い。
もっと数がいれば、魔物にやられることはなかっただろう。武器も持ってなかったしね。
ただ、今回はお返ししてやれる。ヘスペリス連合軍の兵力は、ざっと3000!
戦力差は敵の倍以上だ。さあ来るなら、来やがれ!
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