第172話 パリピになりたい

 アンドレさんの生還を祝うパーティが開かれる。俺達の帰還祝いもかねていた。


 何はさておき、今日は楽しむことにしよう。とにかく発散したい。


 パリピのように何も考えず、浮かれて楽しむのもいい……て、お前らハシャギすぎじゃー!


 女達はなぜか吹っ切れたように、騒ぎまくっていた。何か良いことでもあったのか?


「よいよい、無礼講、無礼講。ドンドンやってくれ!」


「はーい!」


「ありがとうございまーす!」


 王様が許したので収拾がつかなくなり、酔った女達は悪乗りしてしまう。


 どう見ても羽目を外しすぎだと思うが、もう止めようもない。


 場が盛り上がっているところで、注意したら座が白けてしまう。


 ……時間が経ち、パーティはお開きとなった。



「……俺は何をやっているのだろう? あー重い――いてっ!」


 飲んで騒ぐはずだったのに、酔い潰れたフローラ達の介抱をしてるうちに、宴会は終わってしまった。


 今は女達を順番に担いで、客室のベットに乗せているところだ。


 城のメイドさん達は、エリックさんや他の客達の面倒を見ていて手が回らず、俺が運ぶしかなかった。


 えーい! どいつもこいつも、飲み過ぎじゃー!


 アルザスの将軍が帰ってきたから、誰もが嬉しいのだろう。


 エリックさん同様に人望はあるようで、奥さんの他に騎士達からも俺は礼を言われた。


 ……それで今回も雅を背負ったら、なぜか叩かれた。寝相が悪いのか?


 フローラと同様にこれからは注意しよう。マジ痛くてかなわん。


 運び終えて体が疲れた俺は、客室のベットに倒れ込む。

 ほとんど飲んでないのに、グッスリと眠れました。



 案の定、朝には誰も起きてこなかった。


 二日酔いで全員がダウンしている。


 俺だけが広い食堂で朝飯を食っていた。昨日とは打って変わって静かでいい。


「どうもでーす」


 食後にデザートと飲み物を、メイドさんが持ってきてくれた。


 ……プリンにオレンジジュースを見ると、日本にいるような気がしてならない。


 俺はノートパソコンを立ち上げ、今後の計画を立てることにする。


 ゴブリンどもの動きは統率されており、これは親玉がいると見るべきだろう。


 かなりの数がいるとなれば、苦戦は必至だ。


 コッチの武器が良くても、戦い方が悪ければ負けてしまう。


「アルテミス湖一帯に、防御陣地を築こう」


 その他にも必要な物を、俺はピックアップしていく。


 無い物はドワーフのチャールズさんに作ってもらおう。


 アルテミス湖の霧が残っているうちに、準備をしておく必要がある。



 昼過ぎになってフローラ達はようやく起き、ロリエが作った二日酔いの薬を飲んでいる。


「うー、頭が痛いのだ。ガンガンする……」

「お水を飲んだら、もう少し寝ますー」


 みんなだらしない姿で現れ、適当な食い物を持って部屋に戻った。


 回復には時間がかかりそうである。体に悪いので、少しは飲むのをおさえて欲しい。


 まあ、俺が酒の作り方を伝えたせいかもしれないが……。


 ビールの他にも種類が増えていて、飲んべえどもは病みつきだ。


 ないのは日本酒くらいで、各村で米の生産が始まれば造られるだろう。


 完全に復活しているのはドリスだけ、やはりドワーフは酒に強い。


「いやー、美味かったのじゃ。次はフルーツ酒が飲みたいのう」


「……普通に食べるよりなくなりそうだな。まあいい、ドリスちょっといいか? 少し話がしたい」


「いいぞ海彦。そうか! まぐわいだな?」


 後半の台詞は無視して、俺はノートパソコンを見せながら、考えた作戦の素案を説明する。


 まずは他の人の意見を聞いて見たかった。


 それと名職人のドワーフ達には、作ってもらいたいものが山ほどあり、ドリスとチャールズさんにお願いするしかない。



 じっくりと資料を読んで、ドリスは言った。


「海彦のやることに間違いはない……のじゃが、これは一大事業じゃ。ドワーフだけでは人が足りん。人間や他の部族にも手伝ってもらわんと」


「だよなー、無茶を言ってすまん。他の湖の開発もあるしな……」


「みんなが集まれば、何とかなるじゃろ。妾も頑張るのじゃ!」


「ああ、頼りにしている」


 ドリスは嬉しそうに笑った。


 夜になり、今後の方針を決める会議が開かれる。

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