第137話 俺の物語は終わらせない!

 まだまだ宴会は続いている。祭りはたぶん一晩中続くので、基地内ではうるさくて眠れん。


 俺はメイン甲板デッキから、ロワーデッキに下りてベッドルームに向かう。


 スライドドアを開けて中に入り、室内照明をつけると、

 

「なっ!」


 寝室にアマラとシレーヌがいたので、俺は少し驚く。


 ここで引っかかっていた答えがでる。外の広場に二人の姿が見えなかったからだ。


 なぜか居なかったので、気になったのだろう。


 どうやら二人は俺をずっと待っていた……いや、待ち構えていたようだ。


 問題なのはその格好で、バスタオルだけをつけてベットにいたのだ。


 二人は俺に近寄ってくる……この状況はマズイかもしれない。


 いくら何でもナニをしにきたのかは察しはつく。寒い鈍感キャラではない。


 それでも俺は空しい期待をこめて、白々しく聞いてみることにした。

 


「あー、二人ともどうしたんだ? 宴会はたけなわだぞ、いなくていいのか?」


「……海彦。神怪魚ダゴンを倒してくれて本当にありがとう。アマラ、お礼をしにきた」


「私もです!」


「いやいや、みんなの力だ。俺は何もしとらんから、気にしなくていいぞ」


「それでは気が済まない。だからアマラをもらってくれ!」


「はーい、海彦さん。私達といいことしましょ! 今日は危険日だからバッチリです!」


「バッチリじゃねーよ! やめれー!」


「あれー? 全然のってこないです……あ! 私の誘い方が悪いんだ」


「たぶんそうだな、シレーヌ」


「シャチョサン、シャチョサン、Hしよ! ワターシ、子種ホシイ、アルね」


「ぶっ!」


 どこの外国人パブだー! そもそも、何でそんな言葉を知ってるー!?


 俺は気前のいい金持ちのオッサンじゃねー!


「お願いだ海彦、子種をくれ。危険な狩りをする生活はもうすぐ終わる。これからは交易と耕作の時代だ。ならば力よりも、海彦が持っている知恵がいる。アマラ賢い子を産みたい!」


「私達人魚も男性を選ぶことにしました。頭の良い海彦さんは、子作りのお相手として最高です! 他にはいません!」


 二人とも部族の将来を、第一に考えているとこは偉いと思う。


 フタバ竜と何度も戦ったのも村のみんなのためで、そこに自分の欲はない。


 この行為もそうだろう。アマラとシレーヌは立派だ。


 ……だからといって、童貞をやる気はないぞー! 気持ちは分かるが情には流されん!


 ドワーフ温泉以来のまずい状況だが、俺は何とか説得してみる。



「まてまて! はやまるな二人とも!」


「どうしてダメなんですか? 気持ちいいと思うんですけどー」


「そうだ、そうだ!」


「うむ、それには海より深い事情がある」


「なんなのだ海彦?」


「それはだな、S●Xをしてしまったら、『カクヨム』からアカウントごと作品が消されてしまうからなんだー! 垢BANとも言う。運営さんは甘くない。日本には帰りたいが、その前に存在ごと消されたら洒落にならん。春のBAN祭りで散るのは嫌だ……」


「……アマラ、海彦が何を言っているか分からない」


「じゃー、男性向け18禁の『ノクターンノベルズ』に移りましょう。それなら問題ないですね?」


(じょ、冗談ではない! 俺は健全なラノベを書いてるんだー!) 


 何やら作者の声が聞こえてきた。俺同様、相当焦っているらしい。


 とにかくこの場を何とかしないと、マジに運営さんから消される!


「あーもう面倒くさいのだ! シレーヌ、海彦をおさえてくれ!」


「分かったわ! アマラちゃん」


 とうとう力尽ちからずくできやがった。一人でも俺に勝ち目はなく、二人がかりでは手も足もでない。


 ハイドラとドリスのように、やる順番でもめたりはしないだろう。



 ああ、これまでか……


 さようなら『カクヨム』、さようなら読者の皆様、今まで応援ありがとう!


 感謝、感謝。俺の戦いはこれまでだ。


 作者せんせいの次回作にご期待下さい……て、終わってたまるかー!

 

「海彦、いい加減に観念するのだー!」


「そうですー! 私達と○Pしましょう!」


「いやだー!」


 俺は必死で暴れまくる。久々にスキル〝火事場の馬鹿力〟を発揮した。


 このまま、やられるわけにはいかない!

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