第114話 ジャングルを開拓するしかない

 アタワルパさんは招集をかけて、主立った男達を集めてくれた。

 そこで俺はみんなに要望を伝える。


「まずは船の港と前線基地を作りたいです。アルザスの王国軍がくるので、使って良い場所を教えてください」


「わかりもうした。良い場所があるでござる」


 外に出て、入り江のある場所に案内されて行ってみると、かなり広くて申し分なかった。


 クルーザーも泊められるので、ここに基地を作ることに決める。


 とはいえ、草木そうぼくが生い茂っているジャングルなので、人が住めるように切り開く必要があった。


「これは大変だな……道具を取りに、クルーザーに一旦いったん戻ります」


「了解でござる」


 アタワルパさんにはそのまま待っててもらい、もっと人を集めてもらうことにした。


 俺は獣人村に引き返し、小舟でハイドラとクルーザーに急いで戻る。


 仲間達に状況を伝え、雅には使いをすぐに出してもらう。 


「ああ! その日のうちに話をまとめてくるなんて、やっぱり海彦様は勇者ですわ!」


「いや、獣人達も困っていたから……連絡を頼む雅さん。『下準備は進めておく』とエリックさんに伝えてくれ」


「ええ!」



 クルーザーを入り江にまで移動させると、集まっていた獣人達は機械の船を見て驚いていた。


 いつもの亜人の反応である。どうせ最初だけなので、カルチャーショックも見飽きた。


 そんな中、アマラがなぜかドヤ顔でみんなに説明している。

 俺が説明する手間が省けるから、自慢していても文句は言わない。


 クルーザーから道具箱をおろして、運ぶのをみんなに手伝ってもらう。


「こ、これは!?」


 大きな箱の中身は大工道具一式である。斧にノコギリ、その他もろもろ。


 基地作りに欠かせないと思い、たくさん用意してもらっていたのだ。


 獣人達は骨角器こっかくき磨製石器ませいせっきを使っていて、鉄器を見るのも初めてのようだ。


 道具の使い方を教えて、ここら一帯を開拓してもらうことにする。

 地ならしというやつだ。


 獣人達は最初は途惑とまどうものの、すぐに道具を使いこなしてくれた。


 力があり勘も良く、作業がドンドン早くなる。木を切り倒すのが早すぎる!


 道具の便利さに感動し、仕事が楽しくて仕方がないようだ。鉄の切れ味はやはり違う。


「よし、俺も一つ……」


「まあまあ勇者殿、我らにおまかせあれ」


 しくしく……やっぱり何もさせてもらえない。


 切った木材の一部は村で使うことにして、あとは桟橋さんばし・小舟・基地の材料になる。


 クルーザー用に、よしと木材で浮桟橋を作ってもらった。


 これもかすがいと金づちがあればこそだ。獣人は手先も器用。


 五日後に王国軍が来たときには、広大な更地ができていた。



「儂がアルザスの王、エリックじゃ」


「獣人族族長、アタワルパでござる」


 二人は挨拶しガッチリと握手をかわす。


 言葉は少なくとも、目をあわせてお互いを理解しあえたようである。


 エリックさんが来るのは予想通り、将来の交流を考えたらトップ同士が会った方が早い。


 人族は他の亜人とも、そうして関係を深めてきたのだろう。


 まずは友好の宴会が開かれることになる。できた更地を会場にして、テーブルや椅子が置かれた。


 訓練された工兵達の動きに無駄はなく、ミシェルの指揮も見事だった。


 アルザス軍はガレー船と帆船で来ており、帆船には食料やビールなどが山積みされていた。


 調理場と簡易かまどが作られて、料理が作られ始めると良い臭いが広がっていく。


 炊事兵の他に、王宮料理人も来ているようだった。



 アタワルパさんも村から料理を運ばせて、テーブルの上に置いていた。


 獣人族として来客を歓迎せねばならず、もらうだけでは気が引ける。


 で・も・ね……はっきり言おう、ココにはゲテモノ料理しかありません。


 俺は王国軍がくるまでに、食い慣れていた。見た目は悪いが味はよい。


 特に変な虫が美味かったりする。以外と癖になる味で、栄養価もあるらしい。


「わっはははははは!」


 アルザスの人達は遠慮するかと思っていたが、エリックさんが率先して食べていた。


 多分、同じ物しか並ばない食生活だったので、珍しくて仕方ないのだろう。


 だから、天ぷらやアイスなどの現代料理の人気は高い。


 俺が伝えたレシピは本になっている。


 ちなみに女達は、


「ちょっとドリス! その蛇肉よこしなさいよ!」


「早い者勝ちなのじゃー!」


 と争って食べています。亜人の特徴その七――とにかく大食らい、悪食。


 今は神怪魚のことは忘れ、ビールを飲んでみんなで騒いだ。


 俺は疲れて地面に寝転がる。満天の星空は綺麗だった……。

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