第4話不可思議探偵流ストーカー退治
「状況は理解できました。今日からそのストーカーが現れるまで社員がボディガードします。外出時はご一緒させていただきますし、初めに盗聴器類がないかの家のチェックをしますが基本家には入りませんのでそこはご安心ください。」
探偵事務所応接室で依頼人とショウゴが交渉をしていた。基本依頼人との交渉はショウゴが行う。
「今回の依頼はどうだ?」
と別室にいるリョウタがヒトシに話しかける。
「よっぽどの相手だな。屋内外合わせて盗聴器8個、カメラ12個は設置しているぜ。」
千里眼の結果をいかにもきたないものを見たといった顔でヒトシは言った。
「色々と盗聴器やカメラを買って設置していったようだ。しかもカメラは依頼人の家がわかるところにならどこでもに設置してあるし、あまりにも高機能なのを使っているもんだから俺たちじゃないと分からなかっただろうな。」
とストーカーの過去を視たシンヤが言った。
「そのようだとストーカーは自覚がないパターンか?『お前を守っているのは俺だ』的な。」
とケイトが言った。
「当たりだ。だから手紙も一通しか送らなかったし、尾行と盗聴、盗撮が主な行動だな。」
とシンヤが言った。
「そうなると、盗聴器類を全部外したら『なぜ外した』みたいに言って出てくるんじゃない?」
とヒトシが言うが
「ストーカーは刃渡り16cmのナイフを肌身離さず隠し持っているようだ。」
と言うシンヤの言葉に
「銃刀法違反まで犯してんのかよ。ボディーガードはシンヤの役目だろ。大丈夫なのか?」
と心配になった。
「ああ、だからサポートを頼むヒトシ。」
とシンヤはヒトシを見つめた。
「OK。任せとけ。」
とヒトシはにやりと笑った。
「シンヤ、依頼人のとこまで来てくれ。」
とショウゴが呼ぶ。
「ああ、わかってる。」
とシンヤは返事をした。
ひとまずは依頼人の家へ(場所は知っているが)案内してもらう。
「どうぞ上がってください」と依頼人の案内で、マンションの一室に上がらせてもらう。1Kのいかにも一人暮らし用の部屋のようだ。過去を視た感じからするとすでに隣の家の玄関側横の窓、依頼人の玄関に2か所、それぞれのカメラがシンヤを捉えているだろう。
「盗聴器類がないか確かめますね。」
とシンヤは一応一般的な感知器を取り出した。電源を入れただけで反応があった。しかしどの盗聴器に反応しているのかが全く分からない。
「あー反応してますね。ここですね。」
シンヤはストーカーが一番盗撮できなかったカメラを抜き出した。
あとはわざと感知器の電源をオフにし、
「一応見つかったのはこのカメラだけのようですね。こちらは私どもの方で預からせていただきます。これ自体は記録媒体はなく、直接データを発信するタイプのようですので盗撮内容も我々にはわかりませんので安心してください。」
とカメラの個数のことについては嘘をついておいた。依頼人を安心させるのと盗聴器で聞いているであろうストーカーにダメ探偵な演技を聞かせ油断させる作戦のためだ。
そのおかげか依頼人は少し安心したようだ。
一方シンヤからの連絡で盗聴器類が発信したデータを受信する方つまりストーカー側の探索をヒトシの千里眼で行っていた。
「いた、依頼人の家とほとんど隣のマンションのところか。依頼人の家のベランダ側が見下ろせる場所だな。」
とヒトシは報告する。
「どうする?もう少し泳がせとく?もう俺がとってこようか?」
とショウゴの指示をケイトは待った。
「一応藍原さんにも連絡は取っておいたが警察側で逮捕できるようにストーカーが依頼人のところに来るまで待っておこう。」
とショウゴは言った。藍原とは警察の人で、以前にも何度か共同で捜査に取り組んだことのある人物でショウゴ達探偵にも協力的だ。
「記憶操作するより刑務所に入れた方が確かにストーカーのダメージはデカいだろうけど再犯の恐れはないのか?」
ケイトが一番恐れていたのはストーカーが捕まっても刑期を終え、出てきてまたストーカー行為を行うことだ。事実このストーカーは『依頼人の騎士(ナイト)』気取りで犯罪を犯している自覚がない。
「藍原さんが言うには銃刀法違反の方で捕まえるそうだ。だが、罰金をすぐ払えるほどの金持ちみたいだからナイフを押収するだけでストーカー行為についてはこっちで記憶操作やらしていいようだ。」
とショウゴは言った。
「ショウゴが記憶操作するのか?それとも“ヤストシ”か?」
とケイトはショウゴにたずねる。
「いや、今回は俺がしよう。あいつにやらせるほどのことではない。」
とショウゴが言った。ヤストシは呪術の使い手で、わけあってこのメンバーから外れている。
「おいストーカーはもう今夜にはシンヤをナイフで刺すようだぞ。」
と予知能力を持つリョウタがショウゴ達に報告する。
「ヒトシ!シンヤと依頼人の現在位置を!」
とショウゴは叫ぶ
「あいよ!」
とヒトシがゴーグルのようなものを装着すると各々が持つ端末に地図とシンヤ、依頼人、そしてストーカーの位置があらわれた。
「ストーカーは20:23依頼人の帰りにシンヤを襲うつもりらしい。場所はこの交差点だ。」
とリョウタが地図上にマークを付けた。その交差点は依頼人の帰り道で一番人気のない場所だった。
「藍原さんにも“20時にここら辺を巡回してくれ”って連絡しておいた。今夜ストーカーを捕縛する。わかっているだろうけどみな気を抜くなよ。シンヤ聞こえたか?」
とショウゴは端末越しにシンヤに話しかける。
「了解だ。」
シンヤの声が端末から聞こえた。
現時刻20:16リョウタの予知ではあと7分後にストーカーがシンヤを襲うということだ。各自スタンバイは完了している。ショウゴ達、シンヤ、そしてストーカーまでもだ。
20:23シンヤと依頼人が交差点を曲がろうとした瞬間。
「うおおぁー」
とストーカーがシンヤめがけナイフを向けた。
「きゃーー」
と依頼人の叫び声が響く
シンヤは避けることもできたがそうすると依頼人にぶつかるため、ストーカーのナイフを持つ手首を掴んだ。生身の人間ではシンヤの握力や腕力に勝てるのはいないだろう。位置的に言うならストーカー、ナイフの柄、ナイフの刃先、シンヤの順番で直線になっている。
そこにパトカーが来て、乗っていた警察にストーカーは逮捕となり、依頼人はシンヤが自宅へ送った。盗聴器類はストーカーがシンヤを殺そうと外出してすぐにヒトシの千里眼と機械の知識で依頼人の家からも、受信していたストーカーの家からも取り外しておいた。
ショウゴの言っていた通り、銃刀法違反での逮捕となったストーカーはすぐに釈放され、
刑務所前で待機していたショウゴの手によって依頼人に対しての記憶からストーカーしていた記憶までを消された。
「意外と簡単に終わったな。」
と思いっきりナイフで刺されかけたシンヤがのんきに言った。
「一番お前が危なかったじゃないか。」
とヒトシがツッコむ。
「まあ確かに“目で見てくるだけ”のストーカーよりは違う前科だけどきちんとついたし、依頼人からするなら手紙一通とカメラ1つ、と“ニセ彼氏”が襲われかけただけだし、それほど精神的ダメージは少ない方じゃないか?」
とケイトが言った。
「それでも俺たちは依頼を果たさなければならない。」
とリョウタが言った。
「大ごとにならないために小さいことからきちんと解決していく。それが俺たちの使命だろ?」
ショウゴの言葉に一同納得するようにうなずいた。
千里眼と透視を使うヒトシ。
過去を視ることができるシンヤ。
予知能力を持つリョウタ。
物体移動や残留思念を読むことができるケイト
結界を張ることができるショウゴ。
彼らはこれからも“探偵“として様々な問題に立ち向かっていく。
不可思議探偵ファイル 浅葱一彦 @asagiitihiko
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