第三十九話 或る日突然!
――何があったのだ?
まるで、緊急のニュース番組のようだ。
『季節の変わり目は、
革命の一種だから……』
ふと口から零れた言葉。
その言葉は、自分の脳裏にあのことを、鮮やかに蘇らせた。
――忘れもしない、
夜明けにも似た薄紅色。
まさにその色の、桜が満開の季節。自身の内を真っ白にしたいという同じ心の境涯の二人が出会った。出会いは……私立
それは
それは一九八五年の春。
まだ貢も、まだ『必殺の情報屋稼業』の存在を……知らなかった頃のお話。そのお話はその後の一九八六年の春、
何故やならば、
――この二つの物語の間に、
鴇と貢、二人の未だ知られざる秘密が存在していたのだ。
……あっ、存在といえば瞳の色。
それに続いて髪の色を除いたら、第十六話で、タイムリープでもしたような女の子との出会いがあった。その子の存在が、
多分、この物語がフライングスタートの春だったから、全体の十パーセント……正直なところ四十二パーセント過ぎてしまったかもしれないが、ようやく顔ぶれが揃った。
進展が、かなり遅いのは百も承知だが、地球の裏側から、とっても遠い距離から、来訪されたのだから、第二部ということもだから、願わくば、大目に見てあげてほしい。
そんな願いも込みで、
鴇と貢、この二人にまた、縁の下の力持ちになってほしいから、
その女の子、
学園時代のリンダと、瓜二つでなければならないという設定になった。
【……以上、ここまでが制作トピック? みたいなものだ。
これより、
この後、マイクロレコーダーが白煙を上げて、オートマチックに消滅するような、そんなイメージを保持しながらも、物語は緊張の再開を遂げた。
「寝る子は育つ」
と言いながらも、目覚めたら、白い世界は広がっている。白煙のイメージは、カーテンから零れる朝の光に変わって、別の意味で驚くことになる。
……例えるなら、ガラス机の上にある金色の
八時三十分を示している。
時差だな。……いやいや、日本に来て直したから、
「わあ! しまった!」
と、大声を上げる結末になった。
「何、どうしたの?」
と、同じ布団。隣で眠っていたリンダは、面倒くさそうに目を覚ました。
「……遅刻だ」
顔面蒼白な思いだが、
リンダは露骨なまでに不機嫌で、
「何言ってるの。明日からでしょ、学校行くの」
「あっ、そうだった……」
今日は二十三日で、
明日、二十四日からだった。もちろん学校のことだ。
そのことで今日、
「お休み!」
と言って、そっぽ向いてしまった。
……ヒューッと風が吹く心境の中、俺は思った。
『いつからこうなったのだろう。
昔はもっと可愛くて、愛が溢れてたよなあ……』
同じ時! 『時』が『鴇』だけに呼吸ピッタリ。
【ここで、また三人称だ!】
この瞬間も対面している。それは玄関のドアで、九棟の二〇一号室の早坂家と、二〇二号室の
あっ、それは『お辞儀』
でも、それは一階から五階までの階段を駆け上がるほど無理!
……お互いに、玄関のドアだから。
従って、グッドモーニングの八時三十分は、
「しまった!」という貢の声は、リンダと同じように寝起きの鴇の耳にも入ってしまい、
「おいおい……」
と、彼を呟かせる思いもしたが、まだ一昨日の余韻が、遥かに強かった。
二十八年ぶりの再会は、祭りの後の寂しさを感じさせるほどだ。昨日に引き続き、今日も会社は休みで、どうも都合よく設立記念日の振り替え休日(?)なのだ。
――まあ、彼が決めたことだ。
窓の外は、昔とは色を変えるほどの、橙がかった夏空が広がっている。
地球温暖化の風景よりも、今の彼の目は、もっと遠くを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます