第三十九話 或る日突然!


 ――何があったのだ?

 まるで、緊急のニュース番組のようだ。



『季節の変わり目は、

 革命の一種だから……』



 ふと口から零れた言葉。

 その言葉は、自分の脳裏にあのことを、鮮やかに蘇らせた。


 ――忘れもしない、

 夜明けにも似た薄紅色。


 まさにその色の、桜が満開の季節。自身の内を真っ白にしたいという同じ心の境涯の二人が出会った。出会いは……私立大和やまと中学・高等学園の、本当に桜並木の道だ。



 それはみつぐとリンダ、二人の出会い。

 それは一九八五年の春。


 まだ貢も、まだ『必殺の情報屋稼業』の存在を……知らなかった頃のお話。そのお話はその後の一九八六年の春、ときを中心にアナザーストーリーとして展開した。それから二十八年の年月を経て、現在のこの物語の中で、感涙ものの『輝ける合体』を果たすことができた。……というわけで、『外伝』という形にしなくて著者は良かったと確信する。


 何故やならば、

 ――この二つの物語の間に、


 鴇と貢、二人の未だ知られざる秘密が存在していたのだ。



 ……あっ、存在といえば瞳の色。


 それに続いて髪の色を除いたら、第十六話で、タイムリープでもしたような女の子との出会いがあった。その子の存在が、朝倉あさくら希海のぞみの小説の『また家族と一緒に』……が誕生する原点ともなった、あの『かけがえのない日々』を彷彿ほうふつさせるだけではなく、新シリーズとして、それ以前でもその後でもなく、二〇一五年の夏という現在に蘇らせたのだ。


 多分、この物語がフライングスタートの春だったから、全体の十パーセント……正直なところ四十二パーセント過ぎてしまったかもしれないが、ようやく顔ぶれが揃った。


 進展が、かなり遅いのは百も承知だが、地球の裏側から、とっても遠い距離から、来訪されたのだから、第二部ということもだから、願わくば、大目に見てあげてほしい。


 そんな願いも込みで、

 鴇と貢、この二人にまた、縁の下の力持ちになってほしいから、


 その女の子、海里かいりは、

 学園時代のリンダと、瓜二つでなければならないという設定になった。



【……以上、ここまでが制作トピック? みたいなものだ。

 これより、早坂はやさか貢の視点に切り替える。では、健闘を祈っているぞ!】



 この後、マイクロレコーダーが白煙を上げて、オートマチックに消滅するような、そんなイメージを保持しながらも、物語は緊張の再開を遂げた。


「寝る子は育つ」


 と言いながらも、目覚めたら、白い世界は広がっている。白煙のイメージは、カーテンから零れる朝の光に変わって、別の意味で驚くことになる。


 ……例えるなら、ガラス机の上にある金色の時計ゴールデンウォッチ

 八時三十分を示している。


 時差だな。……いやいや、日本に来て直したから、


「わあ! しまった!」

 と、大声を上げる結末になった。



「何、どうしたの?」

 と、同じ布団。隣で眠っていたリンダは、面倒くさそうに目を覚ました。


「……遅刻だ」


 顔面蒼白な思いだが、

 リンダは露骨なまでに不機嫌で、


「何言ってるの。明日からでしょ、学校行くの」


「あっ、そうだった……」


 今日は二十三日で、

 明日、二十四日からだった。もちろん学校のことだ。


 そのことで今日、初子はつこ先生を訪ねる約束をしていた。それも午後三時頃だけど……リンダは、まだ眠いのか、睨むほど本当に不機嫌で、


「お休み!」

 と言って、そっぽ向いてしまった。


 ……ヒューッと風が吹く心境の中、俺は思った。



『いつからこうなったのだろう。

 昔はもっと可愛くて、愛が溢れてたよなあ……』



 同じ時! 『時』が『鴇』だけに呼吸ピッタリ。


【ここで、また三人称だ!】


 この瞬間も対面している。それは玄関のドアで、九棟の二〇一号室の早坂家と、二〇二号室の川合かわい家は、建物の都合により常に向かい合わせだ。足りないものとは……。


 あっ、それは『お辞儀』

 でも、それは一階から五階までの階段を駆け上がるほど無理!


 ……お互いに、玄関のドアだから。


 従って、グッドモーニングの八時三十分は、

「しまった!」という貢の声は、リンダと同じように寝起きの鴇の耳にも入ってしまい、


「おいおい……」

 と、彼を呟かせる思いもしたが、まだ一昨日の余韻が、遥かに強かった。


 二十八年ぶりの再会は、祭りの後の寂しさを感じさせるほどだ。昨日に引き続き、今日も会社は休みで、どうも都合よく設立記念日の振り替え休日(?)なのだ。


 ――まあ、彼が決めたことだ。


 窓の外は、昔とは色を変えるほどの、橙がかった夏空が広がっている。

 地球温暖化の風景よりも、今の彼の目は、もっと遠くを見つめていた。




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