第二部・第一章 夢見る少女・マリと白馬の王子様。

第三十六話 サプライズ!


未来みらい!」


 という名の我が息子を呼び、武器としてのサンドバッグよりも軽くなって、もうすぐ普通に戻れそうなサッカーボールを蹴り上げた。ベランダでキャッチする未来。今はわからずとも、ドラマチックな展開を飾るため、この次の使命と物語を託したのだ。



 ――それは、紛れもなく『武器よ、さらば』

 誰も知らず、誰も理解できなかった旧号きゅうごうの胸の内……


 あの初子はつこでさえ、わからなかったと言う。しかし唯一、言葉にするには、語彙力不足を待たない物語の進展だけど、ときだけは、直感的に理解できたと述べている。


 それは、武器のない世界。


 それは、平和で一番すばらしい刻。……長年、心の何処かで憧れていた独りぼっちではない青春ものの物語。――それを、この物語へと、託したのかもしれない。



 五月生まれの鴇は四十六歳、ほぼ百六十センチの身長で小太り。貢は未だ四十五歳、巨体……百八十五センチの。超カッコいいスタイル。この物語終了後の九月二十一日が誕生日だ。リンダは……女性に年齢を問うのは失礼にあたるが、設定では同じく四十五歳。百五十……五かな? 身長は。鴇が見て、学生時代の面影を残しているほどだから、外見で判断するのは難しい。共通点は、どちらも家族を持っている。


 そう、隣人の関係。

 九棟二〇二号室は、川合かわい家の三人家族。


 同じく九棟、二〇一号室には、

 遥かなる空の旅を満喫しながら越して来た四人家族こそが早坂はやさか家だ。



 序に紹介するなら、四棟三〇三号室は北川きたがわ家。母と子の二人暮らし。八棟一〇二号室が出門でもん家……ここも川合家と同じ三人家族だけど、鴇の視点からは妻がいる。夫婦仲睦まじく今も健在。羨ましき。また未来の視点からだったら、同じ一人っ子でも母がいる。


 此処は千里せんりの町で、今は朝。アーバンスタイルとは懸け離れた世界で、小鳥のさえずりが似合うイメージ。私の沿線が近く川沿い……つまり鉄道模型ファンが喜びそうな情景の中にある、とある公営住宅が舞台。一棟から二十棟まで存在し規則正しく並んでいる。


 但しこの場所の地名、住所などは問わないでほしい。

 あくまでフィクションと思考して頂けたら幸い。イメージなどは大歓迎だ。



 そうこうしているうちに、未来は起きた。


 説明するまでもないけど、この物語の……事実上の主人公。名字に『川合』と付くので女子力アップのような名前になりそうだが、今風の男子。三日前に十五歳となった。


 ……しかしながら、時々は三人称だけど、この物語は基本一人称。


 彼の視点が多かったのか、

 彼の外観について語られることは、あまりなかった。

 描写不足も否めないけど、……(その可能性が大だ)



 接触の多かったミズッチ、……瑞希みずきでさえ、あまり語らなかった。身近な存在になってしまったからかな? 取説(第六話と七話参照)にも記載はなかったが、唯一第二話で瑞希の身長が百五十幾つか……とあったが、ほぼ百五十と見ていいだろう。それよりかは未来の方が高い。設定では百六十三から百六十五となっている。ほぼ、平田ひらた宏史ひろしと同じ背丈だ。……実は体格もよく似ていて、線は細い方だ。


 そして第五話で恭平きょうへいは、未来のことをイケメンと述べていた。モテるそうだ。


 それから大切なことは、

 クルクル回る想い出の果てにある。この間までの鴇視点での出来事だ。


 そのアイテムはプラモデル通して、旧号の手から鴇へ――

 そして鴇の手から、本来の役目に戻りつつ、次の世代へと受け継がれていることだ。



『まずこの部屋の、机の上を見てごらん』


 そこには人型のロボット。……その後、宇宙服のような装甲を用いて武装を固める予定の組立途上のプラモデル。まだ骨組みでメタル系の黒や銀の色彩。全身のメカが露わになっている。ビスも何本か使用した。いずれも付属されていたビスなのだ。


 まとうものは、その周囲にある。いわゆる装甲だ。


 心して周囲を見てほしい。


 装甲たちは待っているのだ。スジ彫りを!

 その傍らにはたがねが……それこそが、受け継がれたアイテムなのだ。



 未来は部屋を出る。


 仮にも不登校を経験したことがあるから、いつも通りでも週初めの朝は特別なものになってしまう。また布団に戻らないように心の準備が、通常の三倍ほど必要になる。


 それにも負けないように一歩。

 瑞希の顔を思い浮かべながら、また一歩と……。


 しかし向かう先は台所を通過、玄関よりも更に遠ざかった部屋。開け放たれた襖、そこで未来が見たものは、――呆気にとられるほどの雑魚寝。


 ご想像にお任せするが、未来の語彙力を遥かに上回るような光景だ。

 三人称にも拘らず、――未来の目線。


 父親の鴇、あとは知らないおじさん……やたら背が高い。おばさんまで……って、この間の一本背負いの女の子によく似ているような? ……ここに瑞希がいたならば、彼女の語彙力をもってするなら、もっと華麗なる描写が出来ていたのかもしれない。



 くどいようだけど、鴇は、この二人と飲みに出ていた。


 私とは違って、国の鉄道沿いにある屋台の村へと遥々臨んだ。――戦友の会。その席では情報屋の話も、もう懐かしき昔話。おとぎばなしのようなおもむきで話は弾んでいた。当時ないと思われていたこの話が、昨夜または今朝、さりげなく実現していた。


 何と、この席で明かさなくてもリンダは知っていた。鴇と貢が情報屋稼業の現役の時から。もう二十八年も昔に……。そして帰りは今朝、夜が明ける頃、


 ふらふらになりながらも玄関を開けて、三人揃って今いる部屋でバタンキューだ。


 効果音が冴えていたと、未来の祖母の宮子みやこが微笑ましく言っていた。

 ……で、いつの間にか明かしていた。未来が知らないと言っていたおじさんとおばさんの名前や、軽い目の特徴まで。


 今日は月曜日、未来は登校するが、鴇は会社を休む。会社の創立記念日ということにしておいた。このあと眠りから覚めても、募るお話が沢山たくさん残っているだろうから。



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