第三十三話 物語の糸が切れた? 彷徨える魂は何処へ?
まるで、
それ以上に運命を操っている赤い糸が、プツリと切れるように、何と回想シーンの
……そして、再び鴇視線の話に戻れるよう、戦友たちは
だからこそ、時間軸の混乱を避けるべく説明を加えてあげるなら、現在は昭和……。
回想の中のこの世界では、
で、あるなら、
今回ばかりは、次年号どころか、明日をも知る由もない状況と思えた。
異世界とか転生とか、あまり
……旧ニイ。
お兄さんといっても、それ以前に俺は孤児。実の兄貴ではなく、とある施設の近所にある確か……六階建マンションに住んでいた三つ上のお兄さん。名前は
それにしても、
どの様にして出会い、どうして仲良くなれたのだろう?
……そうだ!
旧ニイの妹に、
それが出会いとなった。
ここで再会できたのなら、……ずっと一緒だね。
『
また旧ニイと、プラモデル作れるね。スジ彫り教えてね』
暗い闇が背景となり、
コクリと
「鴇……」
と、旧ニイと違う声が、
女の声? 次第に大きく男の声も、複数? でも、闇の冷たさをも
思えば、危険なほど美しき白と赤のコラボレーション。
白き抱擁の中、運命の赤い糸は
……旧ニイは、本当に美しい微笑みを残して、その姿を消していた。
――今ここに、さっきか、
ぼんやりとはしていたが、パイプ椅子に座っていたのは母さんのはずだったが、
でっかい
だからこそ余計に、
「どうしたんだ、お前ら?」
と、声にせずにはいられなかった。
「それはこっちの
と、貢は言う。ここが病院だから、声のボリュームは抑えてくれているようだ。
……あ、病院ということは、つまり俺は病室のベッドの上にいるということだ。間違っても下にはいない。下ならば、敢えて言おう。「
実のところ、さっきのことはよく覚えていなかった。一度は目覚めたようだが、母さんがいて、医師がいて看護士がいた。酸素吸入用のマスクをして、デジタルの計器が幾つもあって、天井のレールからぶら下がっている点滴があった。今もあるが、二種類に減ったようだ。こう見えても、生死を
更に言うなら、
「情報屋がこんなもの忘れちゃいけないぜ」
と、白黒の幾つもの六角形を描くサッカーボールが、
ベッドの横の台。つまり、さっきまでデジタルの計器が置かれていた場所に、
――じゃあ、旧ニイだ。
あり得ないと思うけど、何故か素直に、俺は、そう思えた。
だからかな、
「仁平に、お前のことをな『首根っこ掴んでも連れて帰る。今日限りで情報屋を辞めてもらう』って、思いっ切り上から目線で言っときながら、その本人が最後の最後でドジ踏んで、本当にざまあねえな」
と、嫌ではなかった。素直に自分のドジっぷりが誇りに思えた。
「全くだ。本当に冴えないよな。……手術が施されて摘出されたのが、ピストルの弾が二発。なあ、本当に良かったのか? 彼女に会わなくて」
えっ? と、思った。
その言葉のトーン。その端から貢が何を問いたかったのか、すぐにわかった。
「……いいさ」
「本当に、いいのか?」
くどいと思ったが、
「俺には務まらないよ、彼女の騎士役は。お前の右に出る者がいないんでな……」
「……そうか」
少し間を置いてから、貢は「でもな、彼女に頼まれたんだ。また一緒に遊ぼって、これからもお友達だからって。……その時はな、俺からまた声をかけるから」
それは。貢が言ったことは、遠い約束を意味していた。
――で、猫のようにしなやかに、佳子は、
「じゃあ、あたしの番ね。……鴇君には、責任を取ってもらうから。お姉ちゃんが元気になれるようにね、あたしとトコトン付き合ってもらうから」と、言った。
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