台風の目

鮭さん

台風の目

 台風には目がある。人間は中心の雲一つない部分を目と呼ぶがそれとは違って側面にある。人間の目と同じように、光を認知するための目だ。しかしこれはもう台風にとっては困ったことであった。なぜなら台風はくるくる回るからだ。人間がくるくる回ると平衡感覚を失いバランスを崩すのと同じようなことが、常に台風におきているのだ。そのため台風はいつも自分の意に反する方向へ進んでしまう。台風はよく上陸し人間に迷惑をかけるがそれは意に反する行動で本当はそんなことしたくないのだ。


 こんな噂が耳に入る


「人間の中にはフィギュアスケート選手というやつがいて、そいつらは回っても回っても目を回すことがないらしいぞ。そいつらにコツを聞けば俺たちも目を回さなくて良くなるんじゃないか?今は日本という国にすげえやつがいるらしい。」


 そうと決まれば早速聞きに行こう。台風の台風太郎氏は思った。


 出発進行!!しかしいつものように回ってしまうと平衡感覚を失ってしまう。台風太郎氏はサーフボードにのり、波乗りしながら日本を目指した。


 フーッ!!フーッ!!フーッ!!


 あっという間に日本の沿岸に着いた。だが、ここで気づいてしまった。台風なので、人間とコミュニケーションが取れない。そもそもサーフボードでここまでこれたのだから目を回さない方法なんて聞かなくていいのではないか。いや、回らない台風とは台風なのか。私とは一体なんなのだ。なんのために生きているのだあああああ!!!


 ブオオオオオォォオオォオォォオオオオ!!!


 台風太郎氏は自暴自棄になり、フル回転していつものように人間に迷惑をかけてしまった。


 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

台風の目 鮭さん @sakesan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ