第3話 異世界見学

自宅に帰ってきた僕は、焦っていた。

(やべぇ、どうしよう。当日の持ち物とか服装とか相談員に聞くの忘れてた。)

電話で聞こうとしたが、すでに営業時間外だった。

(やっぱり、だめか。とりあえず、履歴書と異世界経歴書は、持っていこう。あと服装は、スーツで行けば間違いはないはず。)

と思い。僕は、明日の準備をする。

 この世界には、人間町と神町と言う。二つの町がある。人間町には、人間だけが住んでいる。神町には異世界を作っている神々が住んでいる。行き来は、電車でしかできないので、僕はスマホを取り出して、電車の時間を調べることにした。

(明日は、8:00発の電車に乗れば1時間前には着くが、とりあえず、明日は早めに起きよう。)

と思い。目覚ましを5時にセットして、寝た。


次の朝


目覚ましが鳴る前に僕は、目覚めた。独特な緊張感が僕の中にはあった。

朝食は、ランチパックのピーナッツ味を食べた。朝食は、パンになることが多い。

食べ終わった後、僕はとりあえず、スーツに着替えることにした。

ネクタイがうまく結べない。(クソッ。)

まだまだ、時間はあるのに僕は、なぜか焦っていた。

二回、三回、四回目でようやくうまく結べた。

(ふぅ。ようやく結べた。かなり早い気がするけど、もう出発しようかな。)

と思い。僕は荷物を持って、徒歩で駅に向かった。

外は、少し肌寒いがスーツの上に防寒具を着ていたので特に問題はなかった。

駅に向かっている最中、自分が歯を磨いていないこととスマホの充電が20%しかないことに気が付いたが、そのまま駅に向かった。

6:40分 駅に到着した。

(出るの早すぎたな。でもまあいいか。7:00発の電車もあるし問題ない)

 僕は、7:00発の電車に乗り、目的地を目指した。

電車の乗り換えは、数回あったがスムーズに乗り換えることができた。

 そして、異世界見学がある異世界の近くの最寄り駅についた。

ナビによると、最寄り駅から徒歩三分のところに、今日見学する異世界がある。

 だが、見学が予定されている時間より、3時間ぐらい早く到着したので、近くにあったカフェで時間をつぶすことにした。

 スマホの充電、8%。

(はぁ、ちゃんと充電しとけば暇つぶしに使えたのにな)

と思いながら、僕は、カフェでコーヒー一杯を2時間半かけてチビチビ飲んだ。

(よぉーし、30分前だしそろそろ行くか)

 僕は、会計を済ませた後、異世界に向かった。

異世界の中に入ると何人か人がいた。

(あれ、なんかみんな私服なんだけど。)

 僕は、冷や汗をかいた。なんだか、腹の調子もおかしくなってきた。

(落ち着け。別に問題はないはず。クソッ。腹いてぇ。さっきまで全然ダイジョブだったの急に痛くなってきた。あぁー。マジかよ。クソォー。)

「では、時間になりましたので、見学会を始めさせていただきたいと思います。」

とこの異世界の神が言った。

 神に連れられて、見学者たちは、この異世界について説明を受けていた。

(やべぇ、腹が痛すぎてまったく説明が入ってこない。)

 僕が、腹の痛みと格闘している間に話はどんどん進んでいき、気づいたら、

「最後に質問のある方は、いらっしゃいますか」

と神が言った。

 僕は真っ先に手を上げ、

「すみません。トイレてっ、貸してもらえますか」

と質問した。

神は、

「トイレですか。そこにあるので、使ってください。」

と優しく答えたが、周りにいた見学者は、小さい声で笑っていた。

用を足し終えて戻るともうそこにはほとんど見学者がいなかった。

 すると、神が僕に近づいてきて

「どうでしたか。今日の見学は。」

と聞いてきた。

「あ、はい。非常に良かったです」

「ありがとうございます。何か質問はありますか。」

「えっ、あー、・・・・・・・・・・・・・・・特にないです」

「そうですか。出口はあちらになっていますのできおつけてお帰りになってください。」

「ありがとうございます。」

と僕は一礼をし、異世界を出た。


 帰る途中、何度もため息が出た。頭の中であの時は、こうすればよかった、ああすればよかったんだと言う、反省会が自宅に着くまで、際限なく続けられた。

 自宅に到着すると僕は、床に寝ころんだ。

(はぁ、今日は最悪だった。もうこのまま転生先を見つけずに消滅しようかな。

どうせ、転生しても良いことなさそうだし。)

 僕のような人間は、3か月以内に転生先を見つけられない場合、自動的に消滅する。もうなんか、めんどくさくなってきたので、このまま消滅することに決めた。

 そうすると、なんだか日々は、あっという間に溶けてなくなり、気づくと、残り時間は一週間になっていた。

 (残り一週間で消滅するのか。)

そう思うとなんだか急に怖くなってきた。 


「あの相談て、できますか」と僕は異世界ハローワークの受付の人に言う。

 受付の人は「はい、できますよ。ハローワークカードはお持ちですか?」

と言った後、僕はカバンの中からカードを出す。

「はい、それではこの番号でお待ちください」と受付の人が言った。

 僕は椅子に座って待つ。

5分後、「25番でお待ちの方は窓口にお進みください」と機械が言った後、

「25番の方ぁー」と相談員が少し大きめの声で言う。

 僕はそれを聞いて、相談員に近づくと、「25番の方?」と相談員が聞いてきたので僕はその問いにうなずいた。

 相談員は、まず最初にパソコンを操作し始めた。

机に肘をついて手を顎にやり、パソコンのディスプレイを注視している。

20秒ほど注視した後、

「今ですね、急募の転生先があるんですけれど」

と相談員は言い一枚の異世界票を出した。


異世界票(フルタイム)

異世界名 地球

職種   ★未経験歓迎★ 人間| 人間

仕事内容 ・努力次第でチートになれたり、ハーレムを作れたりします

     

学歴       不問

必要な経験    不問

必要な免許・資格 不問

異世界の総人口 70億人以上

異世界の特徴 魔法がない

採用人数 一人

選考方法 なし

補足事項 なし

電話番号 xxx-xxxx-xxxx


「どうですか。転生してみませんか。」

「うーん。じゃぁ、やってみます。」

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異世界ハローワーク @taka-

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