第6話 屋根裏の住人
私の家はとても古い。
門構えと敷地面積が広いので金持ちだと思われているが、そんなことはありません。
至って普通の中流家庭です。
数日前におばあちゃんが亡くなったのですが、遺産はこの維持費ばかりかかる、父母と私で暮らすには広すぎる家だけでした。
おばあちゃんが亡くなってから一週間ほど経った頃でしょうか。
前からよく軋んでいた天井が、さらに鳴るようになりました。
天井の隅から対角線上の隅へ、時に隣の部屋まで音が移動していきます。
ドンドンと、何か飛び跳ねるような音が聞こえたこともありました。
私とお父さんは小さい頃から慣れていたのですが、お母さんだけは違いました。
「おかしいわよ、前々から気持ち悪いと思ってたけど、こんなの天井裏に何かいるに違いないじゃない」
「鼠だろ、でぶっちょの」
お父さんは相手にすることはありませんでした。すると、お母さんは私に訴えてくるのです。
私も最初はお父さん同様に流していたのですが、おばあちゃんも亡くなったことだし、一度天井裏を覗いてみるかと思い立ちました。
おばあちゃんは生前、天井裏に行くことを禁じていました。
そのおばあちゃんはもういないのです。
私は日曜日の朝、お父さん達に内緒で自分の部屋の天井裏の板を外し、天井に上がってみました。
懐中電灯で照らすと、ホコリが浮かび上がります。
屋根裏は広く、身長が低いわたしは腰を折らずに安々と移動することが出来ました。
床を軋ませながら、隅から隅まで何か不審なところはないのかチェックして回りました。
しかし、何もおかしなところはありません。
そろそろ飽きてきたので元いたところへ戻ったところ、外したはずの板が戻してありました。
父母に見つかってしまったか、と思うと同時に、何故声を掛けられないのか不思議でした。
板を外そうと手を掛けたところ、全くびくともしません。
色々と試してみたものの、歯が立ちませんでした。
もしかして、お父さん達が私に意地悪してる?と思い、居間の上に移動して飛んだり跳ねたりしてアピールしました。
それでも変わりません。
大袈裟に床を軋ませながらあちこち走ってみましたが、まるで応答がありません。
いつもの音だと思っているのだろうか。
私はそれからも気付いて欲しくて、床を軋ませ続けました。
どのくらい続けたのかわかりません。
時間の感覚もなければ、空腹を感じることもありません。
誰か気付いて、私に気付いて。
(完)
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