17
アイヴィーが動かなくなって、一年が経った。
ボクはその間、彼女の遺品を整理して、お屋敷の今後の管理をリンダさんとベンおじさんにお願いして、一つの準備を進めてきた。
そう、旅立ちの準備だ。
冬が終わり、春がきた。
雪の隙間から、野花が芽吹こうとしている。アイヴィーに褒められた瑠璃色の瞳で、ボクはこの世界を見つめる。お屋敷を離れることを、寂しいと思う気持ちはある。でもそれ以上に、旅立ちたいという気持ちのほうが強かった。
ボクの隣に、体長二メートルにまで成長したシロキツネが並ぶ。
いつの日か、彼女は語っていた。
世界中を旅して、歌を奏でて、誰かの願いを叶えたい、と。
その願いを、彼女の娘であるボクが引き継ごう。彼女の名を引き継いで。
ボクの名は、メル・アイヴィー。
願いを叶えるために世界を歩き回る、駆け出しの旅人だ。
アイヴィーへと捧げる歌 酒呑ひる猫 @sadahito_fuwa
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