読み終えて、思わず感嘆が零れました。なんて果敢なく美しい小説なのでしょうか。幼き姫が三瀬川を渡るに渡れぬ由縁。契るという意も解らぬ純真と、確かなる恋慕の情。繊細なる文章で綴られた姫君の姿と其の情念というにはあまりにも果敢なき望みが、胸を焦がし、心に焼きついて離れません。言葉の選びかたひとつをとっても、細やかに書かれているのが感じ取れます。まるで指の末端にまで神経を張りめぐらせる舞踊のよう。真に麗しき小説でございます。