「藍より出でて藍よりも青く」藍豆

 異世界転移もの。主人公は、おそらく高校一年生の男の子、那須野才吉(なすの さいきち)。特殊な出生の持ち主で、母親から武術を伝授されている。私は男では無いので憶測でしかないのだけれど、才吉はたぶん、良心と小さな欲望も持つ、一般的な普通の少年。現代で、友人や幼なじみと授業を受けたり他愛の無い話をしたりして過ごしていた。が、きっかけがあって異世界へ行く。物語は、才吉が異世界に既に居て同行人の二人の男女と共に、傷を負った体で木々の中を歩いているシーンから、いきなり始まる。


 設定が違ってたらすみません。

 この作品は、私は一話から十話まで読みました。

 単純な感想としては、面白そうだと思いましたね。

 難しい言葉を多様していなかったり、回りくどい文章があまり見られない事は、読者としてとても読みやすい。

 キャラクターの感情も生き生きと表現されているので、どんなキャラクターなのか掴みやすかったです。

 ただ、最初の一話を除けば、という話になってしまいますが。

 では、ここから個人的に感じた事を書かせて頂きます。


 先述したように、一話のシーンは、かなり突然です。

 主人公が既に異世界にいる。

 主人公が既に旅に出ている。

 主人公が既にパーティーを組んでいる。

 主人公が既に戦闘を経験している、等。

 全てがいきなり、な展開から始まっており、その展開についての説明は、ほとんどと言っていいほど、記されていない。

 これが映像作品やゲームなら、特に引っ掛かりはしないのでしょうけれど、小説だと、どうしても難しい書き方になると思います。

 だって、一番最初に読者がおいてけぼり、食らうんですから。

 世界観とかストーリーの仕掛けとか仕組みとか、そういう物の都合上、読者に「伝えるべきタイミングでない」という理由から、説明を十分に書かない事はあると思います。

 実際、私の作品はよく、説明を一部分しか書かず、ラスト付近で次々とネタばらし、というストーリー運びばかりです。

 書き方が悪いという訳では無いと思うのですが、このままだと、一話だけを読んだ読者が「面白くない」と判断しかねない。

 なのでせめて、味方側や相手側の動き、立ち位置、読んだだけで最初から絵が浮かぶくらいの必要最低限の情報が欲しかったです。

 例えば「道の向こう側から歩いてくる男」が赤髪の男と同じ人物というところに気づくのが、私は少し遅れました。

 その赤髪の男が「剣を肩口に立てかける」シーンがありますが、初めは剣先が地面に刺さっていて、剣の柄(つか)か刀身が肩に立て掛けられていると思っていました。

 その後の文章から見てよくよく考えれば、刀身もしくは鞘に入った刀身が、男の肩の上に乗っていて、剣先は横を向いている状態ですね。

 矢が刺さった場所は、シンプルに一切イメージできません。

 急に「左後方」という言葉が出たからかもしれません。

 それまで私がイメージしていた、男が座った場所や主人公パーティーの動きが全て、ぐちゃぐちゃ、となったような感じでした。

 何度、同じシーンを読み返しても、ここだけは分かりません。

 金髪の亜人の少女が弓に矢をつがえた理由も分かりません。

 金髪の青年の方は、なぜ三人の中で一番前を歩いていたのか、主人公が一番後ろなのか、もよく分からないです。

 もちろん、これら全てに意味があるのだと思います。

 キャラクター性だったり、立場だったり、話を進めるために動きを描く必要があるだとか。

 ただ、大事なこの最初の一話で、読者をおいてけぼりするのは、私は得策では無いと思うのです。

 一話の他では、少しだけ難しい漢字が使われていた事でしょうか。

 読者層にもよりますが、一般の中学生がスラスラ読める文章なら、漢字に弱い読者でも読めると、私は思うんです。

 漸く、暫く、袖、裾、などの漢字を使う時、私はルビをふるようにしています。

 あと、漢字をわざわざ使わなくても伝わる文章では、平仮名や片仮名で表記しますね。

 漢字が多様されていると男らしく、格好いい文体にはなりますが、読者が読めて意味を理解できなければ、意味がありません。

 ですから、もう少し読者側を意識すると、きっともっと面白い作品になると思います。


 と、このような形となりましたが、お役に立てましたでしょうか?

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足りないものは何なんですか? 天風いのり @Inori-Aamakaze

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