第7話 精霊水

 一万キロという距離を、ウェインは静かに息絶えたメルと共に、聖獣兵器に乗ったまま向かっていた。

 やがて、地平線程に広がる緑の大地パーラースワートロームへと辿り着く。


「メル……着いたよ。君の故郷に」

 ウェインは冷たくなったメルの身体を抱きかかえたまま、聖獣兵器から降り立ち。哀しみの中、彼女がよく口ずさんでいた歌を歌いながら、川辺へと向かい、彼女の口へそっと……そこの水を飲ませて上げた。

 最早、何の意味もないことは、ウェインにもよく分かっていた。でも、そうしてあげたかったのだ。せめてもの……という思いで。


 所が不思議なことに、それから暫くして聞き慣れた歌声が聞こえて来るようになる。しかもそれは、ウェインが抱きかかえるメルの方からだった。

 ウェインは恐る恐る、その手の中で静かに眠っている筈の

メルを見つめた。


「……ウェイン、おはよ。どうしたの、もう歌わないの?」

「は、ハハ…。生きてる、はっはっはっは! メルが生きてる!」

「え、なになに!? ウェイン、どうしたの? ……あ!」


 聖獣兵器が二人を見守る中、ウェインはメルを強く抱きしめ……それから優しいキスをしてあげたのだった。


おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

聖なる機械と獣のラブソング みゃも @myamo2016

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ