第6話 覚醒

「いい加減にしろ、メルに手を出すな!」

「この野郎~っ、こんな状況で俺に対してなめた口聞きやがって。ただじゃ置かねぇからな」

「待って!」

「──!!?」

「待ってください……。大人しく着いて行きますから、ウェインにはもうこれ以上、手を出さないでください!」

「ほぅ、コイツは泣かせる話じゃないか。だが!」

 次の瞬間、ウェインは男から蹴り上げられ、聖獣兵器の足元にまで転がり落ちた。

「この位のケジメは、ちゃあ~んと付けておかなくちゃな♡」

「──ウェイン!!

「だ、大丈夫だよ……メ、ル…僕は、大丈夫だから…」

 ウェインはそう言いながらも、倒れそのまま気絶した。

「ウェイン!!」

「うるさいっ!! ピーピーと騒ぐんじゃない。命を取られないだけ、有り難く思いやがれ。行くぞ!」

 メルは兵士二人から両腕を掴まれながら、雪原に停泊する聖霊飛翔機へと連れ込まれた。


 それから間もなく、聖霊飛翔機は飛び立つ。

 その中でメルは、静かに……そして悲しげに、ウェインの大事を願い祈り歌った。すると──。


 クォオオオオオオオオ──ン!!!


「な、何だよ、アレは!? うわ!」

 突然に聖獣兵器が、大きな雄叫びのようなものを上げ、聖霊飛翔機と同じ高度までジャンプして跳び上がるとを鷲掴み、再び雪原へ、ズシリと降り立った。


「う、ウェイン!」

 メルは潰れ大破した聖霊飛翔機から飛び出し、倒れるウェインの傍まで走り寄り屈んだ。

「大丈夫?」

「……な、何とかね。メルの方は?」

「私なら大丈夫」

「そっか。それは良かった」

「くそっ……ふざけやがって!」

「──!! 危ないッ!」

 男が聖霊銃を構え撃つのと同時に、メルはウェインを庇って肩を撃ち抜かれ、大きく負傷した。その肩辺りからは沢山の血が流れている……。

「メ、メルっ!! くそっ」

 ウェインが怒りを顕にして立ち上がると同時、聖獣兵器が聖霊銃を持つ男の腕を足で踏み付けていた。それはとても残酷な光景だ。彼のそれまでの行動を思えば、自業自得なのかも知れないが……。

 それでもがき苦しんでいる男からウェインは視線を逸らし、血塗れになりながらもメルを抱きかかえ、コクピット内へと一緒に乗り込む。


 そして、大空へと一気に翔び上がった。


「……メル、奇跡だ。コイツ、翔んでる。これなら君の故郷までも、ひとっ飛びで行けそうだぞ!」

「ん、ぅん……ウェイン…あのね。私、あなたに言い忘れてたことがあるの…」

「なに?」

「……」

 メルは最後に、ウェインにだけ聞こえるほど小さな声でそっと告げ、そして……静かに逝った──。


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