第5話 戦闘
翌日の朝。辺りが騒がしいのを感じ、ウェインは直ぐに起き上がった。それから聖獣兵器の上へと駆け上がり、辺りを警戒しながら伺い見る。
すると、上空を聖霊飛翔機ラーゼが数機、通り過ぎてゆく。その中で、何かがチカチカと光った。
「しまった! 見つかったか」
「ウェイン、どうかしたの?」
「メル! 例の兵士達だ。直ぐに此処から離れるよ!」
「あ、うん。わかった!」
メルはそれを聞いて、目の前の釜戸に水を掛け、火を消し。急ぎ聖獣兵器の腕の上に登る。
「きっと奴ら、この足跡を追って来たに違いない。空を飛べたらいいんだけど、そうはいかないからね」
聖獣兵器が動く度に、大きな足跡が残る。背丈五メートルもある巨人なだけに、仕方のないことだった。
「じゃあ、どうするの?」
「どうって……」
聖獣兵器は巨人な為、森の中でも一度見つかれば、隠れることは難しい。現に聖霊飛翔機ラーゼが、二人の周りを何度も旋回し、何処かに合図をチカチカと送っている。
「結局のところ……逃げるしかないさ!」
ウェインはそう言って、ゴーグルを付けるとコクピット内に潜り込み、聖獣兵器を動かし走り出した。だが、その後をラーゼが低空飛行で追跡してくる。
「フィルウェインくん、君は重大な国家違反を犯している。直ぐに止まりなさい。今なら、情状酌量の余地があることを認めて上げようじゃないか」
『うるさいっ!!』
「──!? う、うるさいだとぉ~っ。この野郎っ!
その奇妙な獣に乗っているクソガキ! 今直ぐに止まらなければ、命の保証は無いぞ。これは警告だ!! 直ぐにでも止まれ!」
『──断る!!』
「ちっ」
ラーゼはそこで高度を上げ、再びチカチカと何かに合図を送っていた。すると前方に、何かが見えてくる。
「あれは……相当にヤバいな」
「ウェイン、前方に何か来てる!」
「わかってる! これから振り切るから、振り落とされないにしっかりと掴まってて!!」
「うん!」
ウェインが聖獣兵器の重心を傾け、左斜面上方向へと逸らすと。それに併せ、相手も同様に動いてきた。それはよく見ると、上半身が魔神の姿で下半身は鹿のような形をした聖霊兵器であった。それが雪煙の中、三体も姿が見える。
「やはり、ディガーナイツか……厄介だな」
「ウェイン、あれも聖獣兵器なの?」
「いや、あれは違うよ。人の手で造られた、対・山岳地帯用の聖霊機械……うわ!」
ギリギリの所で避けたが、危うく殺られる所だった。その手に持つ槍を、百メートル以上もあるあんな距離から投げつけて来たのだ。
「こちらが足二本に対し、向こうは四本脚。逃げた所で、追いつかれる。ならば──!」
後ろから追い掛けられ、近付いて来たギリギリの所で相手の攻撃を交わしながら上体を逸らし、振り向き様にディガーナイツ一体の頭を鷲掴みにして、そのまま砕いた。
その頭部の下に居たコクピット内に居る兵士は驚き、そこから泣きながら逃げ出してゆく。
「とりあえず、コレで一体!」
序にディガーナイツが持つ槍を手に入れ、そこを離脱し、更に山手の谷間へと走り向かい隠れた。今の此方の動きを見て、相手は警戒したように距離を長めに取っている。
「メル、大丈夫?」
「ん、うん」
「この山の向こう側に行けば、中立国がある。きっとそこまでは奴らも追っては来ない筈だから」
「逃げ切れそう? もしも、無理そうなら……」
「逃げ切ってやるさ!」
ウェインはそう言って、雪山の頂上を目指した。その上空をラーゼが飛び回り、此方の位置を知らせている。
「ウェイン、後ろ!」
「──!!?」
聖獣兵器の右腕にしがみつくメルが、雪煙が舞い視界の悪い中、そう教えてくれたのだ。
「くっ!」
ギリギリの所で攻撃を避けたが、そこから大きく滑り下り、再び山頂からは離れてしまう。
「メル、大丈夫か!?」
「ん……だ、大丈夫…」
「──!?」
だが、メルは腕から血を流し、更に胸を押さえ苦しそうにしていた。
ウェインはゴーグルを急ぎ外し、コクピットから飛び出して、メルの傍へと行く。
「メル、胸が苦しいのか!?」
「ウ、ウェイン……う、後ろ…」
「おっと、そこまでだ」
「──!!?」
後ろを見ると、例の兵士がニヤリと笑み、聖霊銃をウェインの頭に当てていた。
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