第4話 決意
山深い雪解けの水が流れる高冷地まで逃げ隠れ、その日は、そこで夜を過ごす事に決めた。
「メル、寒いだろ? 何か燃える物を探して、薪にするから待ってて」
「私も手伝う!」
「……よし! じゃあ、メルは手頃な薪と枯れ葉を。僕はその間に石を運んで、釜戸を作るよ」
「わかった!」
二人は直ぐに手分けして作業を始めた。
メルは燃えやすそうな枯れ木と枯れ葉を拾い集め、聖獣兵器の傍まで次々に持って行く。ウェインは手頃な石を拾い集め、それを円形に配置し石組の釜戸を作って、その中へ枯れ木と枯れ葉を置いて、聖獣兵器に備え付けてあるサバイバル道具から少量の燃料と着火剤を取り出し、それで火をつけた。
それからまた聖獣兵器の元へと戻り、サバイバル道具の中にあった毛布を取り出し、メルの肩に優しく掛けて。レトルトの簡易な食材を鍋の中に入れ、釜戸の上に置き、二人で仲良く分けて食べた。
「……ごめんね」
食事を簡単に済ませ、熱い飲み物を飲みながらようやく一息付いていると、メルがポツリとそう言ったのだ。
「急にどうしたの?」
「私のせいで、ウェインに凄い迷惑を掛けちゃったから……」
「ばーか、そんなこと気にしなくて良いよ。
それよりも、メル。あいつらはどうして、あんなにも必死になってメルの事を探しているの?」
「それは……私が
「あるでぱーむ??」
「……うん。私が産まれた国では、時折、特別な力を持った民が産まれてくることがあるの」
「それが……アルデパーム?」
「うん、そう。その不思議な力の謎を解明する為に、これまでにも多くの民が拉致されていた。そして、誰一人としてそこから戻って来た人は居なかった……」
「……酷い事をする…」
「うん……それでね、きっとこの子もその一つなんだと私は思うの」
そう言ってメルは、聖獣兵器を見上げた。それはウェインからすれば、思ってもみないことだった。
「まさか……コレもなのか?」
「うん……。これに似た聖なる生き物が、私の産まれた大地には居るの。数こそ少ないけど、私は以前に、キルバレスの人達がこの聖獣を捕えようとしていたのを見たことがあった。
可哀想に……こんな所で、こんな風にされていたなんて…」
「……ごめん」
メルはそこで、ハッとした。
「あ、違うの! 私は何も、ウェインを責めてる訳じゃないから」
「いや! こんな事が、許されて良い訳が無い。だから、一緒に帰ろう!」
「……え?」
「コイツと君が産まれた大地へ!」
ウェインはそう言って、聖獣兵器を見上げた。
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