奴
詩乃
奴
……暑い。只々暑い。
北海道暮らしの私は、夏休み中に祖母の家がある埼玉県にやって来た。
「はぁ…」
-終点○○駅です-
「ったく、あのババァどこにいんのよ。駅のホームにいるって行ってたのに」
私は祖母が殺したいと思うほど憎い。
「ナツちゃん!こっちこっちぃ!」
「おばぁちゃん!」
だが奴の前では良い子を演じなければならない。なんでかって?そのうち分かる。
「久しぶりだねぇナツちゃん。元気にしてたかい?」
「うんっ!それよりさっ早くおばぁちゃんの家いこーよぉー疲れたぁー」
「はいはい」
「着いたー!!」バタバタバタッ
「ナツちゃん?ただいまは?」
「たっただいまぁ…」
奴は少しでも気に食わないことがあると怒るのだ。…危なかった。
「そっそれじゃあ私荷物置いてくるねっ」
逃げなければ。
「はーい。行ってらっしゃい」
「ナツちゃん」
「なーにー?」
「アノヘヤニハイラナイデネ?」
「うん。分かってるよ」
「そう」
本来ならば こんな家に来たくもない。
でも、見つけなくちゃいけない。アレを。
作戦実行は今夜、必ず見つける。待ってて。
-お母さん-
ピピピッピピピッピピピッ
深夜1時。アラームが鳴った。作戦開始だ。
アレがあるのは奴の寝室の隣にある部屋。
見つかったらトイレを探してたとでも言えばいい。
キシッキシッ。床が軋む。
「ん〜?」
マズイ。
「誰かいるの?ナツちゃん?」
終わった。
「………」
……?寝たのか?まぁいいや。急がないと。
ガチャッ
……開いてる。なんで?普段は閉まってるのに。嫌な予感がする。今夜は諦めるか?
「……あっ。あった。お母さん。」
そう。私が探していたのはお母さん。
生首だけのお母さん。
「やっと会えたね。ずっと探してたの。」
久々にあったお母さんは腐敗していて目玉からは蛆虫みたいのが出ていた。
「さぁ帰ろう。北海道に。一緒に。」
ドンッ。私の意識は途切れた。
気づいたら奴の寝室に居た。
あれ?立てない。手足がない。テアシガナイ?
「いっいやぁ…」
どうすればいい。ドウスレバ?
ガチャ
「おはようナツちゃん」
「ふざけんなっクソババァッ!!」
「ナツちゃん?おはようでしょう?」
そう言って奴は血まみれの鉈を取り出した。
「やめてよぉ……お願いだからぁ…」
「大丈夫よ。おばあちゃんこういうのは得意なの。少し痛いだけだから。ね?
ダ イ ジ ョ ウ ブ 」
そう言って奴は私の声帯を潰した後、首をゆっくり切っていった。
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ
最後に見たのは奴の歪みきった顔とお母さんの生首だった。
「ダイジョウブ。イタクナイ。イタクナイ」
-終-
奴 詩乃 @puchako
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