第4話 邂逅
その少女は、雑踏の中で一際目を引く存在だった。
冬空のわずかな日差しを反射して白く輝く肌に、風を受けてサラサラとなびく黒いロングヘアー。
上質そうな白い生地に金の装飾がふんだんにあしらわれたドレスは、コンクリートだらけの空間に不釣り合いなほど神聖だった。
ふと女の子と目が合う。
そして、何かを叫ぶ。
瞬間、風が止んで周りの音が一切消えた。
それはまるで、俺たち以外の世界が時を止めたかのように。
まるでここが、物語の始まりだとでも言うかのように–––––––––
「何語?」
聞き慣れない言語だったので何を言っているのかよく分からなかった。
初めてコミケに来た俺は、「外国人のコスプレイヤーも結構いるんだなあ」と思いながら企業ブースへと急いだ。
山田に頼まれたおつかいを早めに済ませなければならない。
好きだって言ってたサークルの本買えたかなあ、山田。
ビッグサイトからの帰り道、両手いっぱいに紙袋を下げた山田の頭が上下に小刻みに揺れている。
山田がスキップなんて珍しい。
「来年受験だけどさ、夏コミも行く?」
俺からの提案に、いつもは死んだ魚のごとく曇っている山田の瞳が、ほんのちょっとだけ輝いた。
第四話 おわり
いたって平凡な俺の日常が平凡すぎる件 @hoyoyo
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