突然の詩人

希望は、背後にはない

言い直そう

恐怖は、希望の影だ


一番好きな音楽は雨

二番目に好きな音楽は波

三番目に好きな音楽は風


詩人は、突然やってきた

詩人とは何か


詩人は跳躍する

  理性と感性の裂け目を走る

時空を断絶する

そして、新しい世界を拓く


すべての声を吸い込み

一瞬の内に消し去る


それは、シャーマンだろうか *21

それは、マジシャンだろうか


それは、何と呼ばれようと問題ではない

詩人はただ、呪いを解く

何重にもかけられた呪いを解く


言葉は呪いの道具だ

だからそれは

慎重に

細心の注意をもって

そう、劇薬のように

扱わなくてはいけない


言葉は、すぐに死ぬ

言葉は、すぐに殺す

死んだ言葉こそ、呪いの道具だ


今、死んだ言葉が氾濫していないか

死んだ言葉で書かれた本が、山積みにされていないか

死んだ言葉で講演が、会議が、会話が行われていないか


死んだ言葉を墓場に葬るのも詩人の役割だ

詩人は、突然に現れる



*21 超自然的存在と交信、交流できる人。巫女など。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る