戦術論
そもそもなぜ「パスを回せ」なのか
体育の授業からNBAの試合に至るまで、バスケにおいて、オフェンスでは「パスを回せ」とよく言われます。
体育の授業やレクリエーションならば、参加者全員がシュートを撃って楽しめるようにという意図が読み取れます。それもまた大切な事でしょう。
しかし、部活バスケにおける試合や、果てはプロの世界まで「パスを回せ」は非常によく使われるフレーズです。パスを回さずボールを独占する選手は、どれほど個人技が優れていても、大きなマイナス評価をつけられてしまいます。
ここに疑問を抱く人もいるのではないでしょうか。
パスは、自分以外の味方にボールを渡す行為です。
レクリエーションではない真剣勝負なら、チームで一番上手い人がずっとボールを独り占めして攻めまくる方がいいのでは、とも思えます。
今回はこのあたりをお話しします。
まず結論から。なぜ「パスを回せ」なのかと言うと、パスを受け取った瞬間こそが得点を狙う最大のチャンスになりやすいからです。
バスケを体育の授業ぐらいでしかやった事のない人も、当時を思い出してみてください。非バスケ部の子が体育バスケで得点できたシチュエーションというのは、ほとんどが「ディフェンスが離れていたタイミングでパスを貰ってすぐにシュート」ではなかったでしょうか。
極論すると、実はプロの試合ですらこれに通じる部分があります。
そもそもなぜ「オフェンス側の選手に対してディフェンスが離れている」という状況が発生するのか?
ディフェンス側の視点で考えてみましょう。目の前の相手がボールを持っている場合、その目の前の相手こそが最優先で警戒すべき対象です。隙を見せれば即失点に繋がるのだからこれは当然と言えるでしょう。
しかし、目の前の相手がボールを持っていない場合はどうでしょう。
自分のマークしている相手が、ボールマンからパスを受け取れそうな位置にいる場合、一般的にはボールマンとマーク対象の2人を交互に見たり、少し下がって2人を同時に視界に収めたりして、2人を見失わないようにしつつ、甘いパスが来ようものならパスカットしてボールを奪えるように身構えます。
自分のマーク対象がパスを受け取れそうもない位置にいる場合は、ディフェンス側は少しボールマン寄りの位置に就き、自分のマーク対象へのパスを警戒するよりも、味方が抜かれた場合のヘルプに飛び出せるように準備します。
これらのディフェンスの位置取りは、俗に「1線」「2線」「3線」と呼ばれます。
ディフェンス側は、チームとして協力し合うディフェンスを実現するためには、自分のマーク対象とボールの位置関係に応じて適切なポジショニングをする事が肝要なのです。
これをオフェンス側の視点で見てみると、パスを出してボールの現在位置を変える事によって、ディフェンスの現在位置を「適切でないポジショニング」に変えてしまう事ができます。
この「適切でなさ」こそが、パスを受け取った選手にとっての攻めるチャンスになります。
ディフェンス側の選手も当然ながら適切なポジショニングに就き直そうとするでしょうが、就き直すまでには一瞬のタイムラグが発生します。そのタイムラグのうちに、適切なポジショニングとのズレを利用して攻めるというわけです。
より具体的には、ディフェンス側の選手が適切なポジショニングよりも後ろに下がっていたならシュートが撃ちやすいですし、横にズレていたならドライブして抜きやすい。いわんやディフェンス側の選手がマーク対象を視界から外していた時などは、パス1本からフリーでのゴール下のイージーシュートすら発生します。
前述した「非バスケ部の子でも点が取れるシチュエーション」は、このような現象の、ひとつの究極形と言えます。
もちろん、まともにバスケ経験のある人同士の勝負においては、そこまで極端な事はそう多くは起きません。ですが、パスによって発生する「適切なポジショニングとのズレ」を利用するというのは、バスケにおいて極めて一般的な攻撃の切り口です。そのズレを利用するからこそ、1対1勝負を有利な状態から仕掛ける事ができるわけです。
どれぐらい大きなズレを作れば攻めきれるのかは個人の技量によりますし、このズレによるチャンスを拡大するための
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