技術論

パワーで攻めろ! ローポストオフェンス

 筆者は中学時代はPFパワーフォワードでした。

 当時はPFパワーフォワードがアウトサイドシュートを撃つなんてのは珍しい事であり、もっぱら得点はポストプレイからでした。今回はこの辺をお伝えしていきます。


 まずポストプレイとは何ぞや。

 wiki先生に尋ねてみたりすると、「前線で攻撃の起点を作る行為」みたいに出てきます。

 何のこっちゃですね。

 概論としては間違っていませんが、もう少しバスケットボールに特化したお話をしていきましょう。

 バスケットでは、ゴール下の3秒制限区域(ゴール下から縦長の長方形に線が引かれてるアレです。スラムダンク時代だと台形でしたが)のすぐ横のあたりを「ポストの位置」などと言ったりします。

 制限区域内にはオフェンス側の選手は3秒以上留まれないため、特定の位置にズデンと構えてボールを貰おうとすると、ポストの位置がもっともゴールに近い位置という事になります。

 つまりポストプレイとは、「ゴールに近い位置から成功率の高いシュートを撃つために、ゴールの近くでボールを貰う」というプレイです。

 もちろんディフェンス側の心理としてはゴール付近から簡単なシュートを撃たせたくはないため、ポストプレイをしようとする選手は放置できません。オフェンス側としてはこうして警戒が集まる事を利用して、ディフェンスに綻びを作る布石を撃つ狙いもあります。


 さて、実際のプレイを見ていきましょう。

 ポストプレイを仕掛ける選手は、まずは「面を取る」という行動をします。

 これはディフェンス側の選手に対して、背中を当ててゴール側へと押し込む動作です。こうしてディフェンスを自分の前に飛び出させないよう封じ込む事で、アウトサイドにいる味方から安全にパスを貰います。

 この時のコツとしては、尻を後ろに突き出すような感じで、かつ背筋を反らし気味にします。そうすると腰の骨盤が前傾する姿勢になり、パワーポジションと呼ばれる"もっとも力強く踏ん張りが利く姿勢"になります。

 ディフェンスも押し返して来ますが、押し負けてはいけません。そのためポストプレイにはパワーが必要です。どうしても押し負けてしまうなら、ディフェンスが前に飛び出てくるタイミングで裏に回るという手もありますが、それは応用技です。


 この「面を取る」動きを、ポストの位置の中でも、ゴール真横~もう少しフリースローライン寄りの位置あたりで行うのがローポストの動きです。

 一般的にバスケットの世界では、ゴールに向かって奥側の位置を「低い」、手前側の位置を「高い」と表現する事があります。低い位置のポストプレイだからローポスト、というわけです。

 ローポストは特に、ボールを受け取ってそのまま自分でゴールを狙う際に有効だとされています。


 さて少し話が脱線気味になりましたが、いざポストの位置でボールを貰いましょう。

 この際、ポストマンはジャンプしてボールを受け取り、両足同時に着地します。

 これにももちろん理由があります。ジャンプしてボールに飛びつくのは、ディフェンスにボールを取られないようにするためです。ポストプレイを得意としている選手にはビッグマンが多いのもこれが理由の一端で、高いパスを長身の選手がジャンプして受け取ろうとすれば、ボールを奪われる危険性は大きく減ります。

 そして両足同時に着地するのは、左右どちらにでもピボットできるようにするためです。

 ピボットは体育の授業で覚えた人もいるのではないでしょうか。ボールを受け取って一歩目、二歩目と歩いたあと、一歩目の足が動いていなければ、二歩目の足は踏み替えてもいいというアレです。

 両足同時に着地すると、どちらが二歩目かわからないため、どちらの足をピボットしてもいいというルールなのです。

 つまり両足同時に着地するのは、左右どちらから攻めようとしているのかをディフェンスに読ませないための技術です。


 ボールを受け取った時点では、ポストマンはパスを貰うためアウトサイドの味方の方を向いており、ゴールに背を向けています。

 無事ボールを受け取ったら、ピボットターンでゴールに正対して、いよいよ得点を狙いにいきます。

 シュートまで持ち込むための基本的な選択肢は3つです。


 第一に、フロントターン。

 つま先側からぐるっと180度ターンして斜め前方に踏み出し、その際の歩幅でディフェンスを横にかわしてシュートします。

 ぐるっと大きくターンするので、大きい歩幅でディフェンスをかわしやすい反面、ターンに1秒近い時間がかかるため、ディフェンスの横方向の反応が素早いと対応されてしまいます。またピボットフット側に体重が乗っていると、ターンの勢いで体が流れてしまい、思いのほかシュートが外れやすくもなります。


 第二に、バックターン。

 これはゴールとディフェンスに背を向けたまま、ピボットフットをすっと後ろに踏み出し、最速でディフェンスの横を取る動きです。

 ディフェンスの横を取るというのは、ディフェンスを抜くのと等価です。ディフェンス側は相手を止めようとして横から当たってしまえばファウルになるため、横を取られたディフェンスは下がって守らざるを得ません。

 ただしポストマンの側も、横を取る事に二歩目を使ってしまうため、その体勢のままではシュートに行けません。横を取ったあとはワンドリブルしてゴールに正対、そしてシュートです。

 この際、ドリブル開始よりも早く軸足を動かしてしまってトラベリングになる事がしばしばあります。CセンターPFパワーフォワードはドリブル慣れしていない事が多く、意外とやってしまいがちです。


 最後に、リバースターンシュート。

 これはかかと側から180度ターンし、その場でジャンプシュートを撃つものです。

 フロントターンまたはバックターンでゴールに迫ってくるだろうと読んでいるディフェンスは、横や後ろに移動して止めようとするため、その裏をかく効果があります。ただ短めのミドルシュートを撃つという選択肢なので、ゴール下でのシュートに比べると根本的に不確実です。


 この3つを基本的な選択肢としつつも、足を踏み出さずに体だけ振ってフェイントを入れたり、ターンしてシュートと見せかけてさらにもう一度ピボットして深く踏み込んだりといった小技を組み合わせてゴールを狙うのがポストプレイによるオフェンスです。

 しかし、いずれの選択肢を取っても、ポストの位置で面を取る時点でディフェンスとのパワー勝負になりますし、ターンしてシュートを狙いにいく際にはディフェンスとの激しい接触も当たり前のように発生します。

 そのため、ポストプレイで大切なのはパワーと体の強さです。

 言い換えると、自分よりも小柄または細身な相手にディフェンスされている時、真っ向勝負で点を取りに行くのに有効なオフェンス技術です。


 スピードがなく運動能力で劣る人でも悲観する事はありません。パワーでゴールを狙いましょう。

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