得点源! SF(スモールフォワード)

 まずもってNBAでSFスモールフォワードを務めている選手は、平均身長203cmあります。

 スモールとは。


 さて、このポジションについてWeb上で軽く調べてみると、「点取り屋のポジション」と書かれている事もあり、「オールラウンダーのポジション」と書かれている事もあります。

 どっちやねんって感じです。

 実はこれはSFスモールフォワードの特徴の表と裏であり、どちらも間違ってはいません。

 今回はそのあたりを紐解いていくとしましょう。


 SFスモールフォワードはちょっと立ち位置が特殊なポジションです。

 フォワード、すなわち前衛のポジションでありながら、基本的にはアウトサイドを定位置とする事が多いです。具体的にはゴールに対して斜め45度~0度(ゴール真横)の角度の、3Pライン沿いのあたりです。

 Gガードの2ポジションのように後衛ではないため、現在攻められていない側のゴールに近いという特性がありません。そのため速攻や速攻阻止セーフティに適したポジションとは言えません。

 一方で後述のPFパワーフォワードCセンターのようにインサイドを主な仕事場とするポジションでもないため、ゴール下でのリバウンド争いに参加する頻度も高くはありません。まあGガードの2ポジションよりは参加しますが、リバウンド争いの主力になる事は極めて稀です。


 これは言い方を変えると、義務的な役割がないという事です。

 Gガードの選手は、相手チームから速攻を仕掛けられそうな時には、真っ先に自陣に戻って速攻を食い止め。そうしないとチームが簡単に大量失点してしまいます。

 PFパワーフォワードCセンターの選手は、少なくともディフェンスリバウンドは極力取ら。取れなければ相手に際限なくシュートを撃たれ、確実に失点してしまいます。

 SFスモールフォワードは唯一、そういった義務的な役割を持たないポジションなのです。

 つまり、義務的な役割への配慮の必要なく、インサイド・アウトサイドをもっとも自由に行き来する事ができ、点を取る事に専念できるポジションなのです。


 また、SFスモールフォワードの定位置である「斜め45度~0度の3Pライン沿い」は、得点期待値の高いシュートを撃ちやすい位置でもあります。

 まず、3Pラインは半円形のようで、実は緩やかに縦長の楕円形を描いています。そのため0度(ゴールから見て真横)の3Pライン沿い、俗にコーナーと呼ばれるそこは、「もっともゴールまでの距離が短い3Pシュート」を撃てる場所です。

 実際NBAでも、コーナーからの3Pシュートは平均39%と高い成功率が記録されています。コーナー以外からの3Pシュートは32%程度なので、得点期待値で言うと3×7%=0.21の差があります。これはなまじのシュート練習で埋められる期待値の差ではありません。

 加えて、「斜め45度~0度の3Pライン沿い」という位置は、ドリブル突破からの得点を狙う際にも強みがあります。

 例えばゴール正面方向からドリブル突破を仕掛けると、目の前のディフェンスを抜いても、左右からヘルプディフェンスが飛び出してきて止められやすいです。

 しかしゴール側面からであれば、逆サイドにいる選手とは距離があるため、ヘルプディフェンスに入られる可能性が低く、ドリブル突破がイージーシュートに繋がりやすいのです。多くの指導者が「45度から攻めろ」と教える理由の一端がここにあります。


 かくのごとく、SFスモールフォワードはインサイド・アウトサイドいずれからも得点期待値の高いシュートを撃つチャンスが巡って来やすいポジションです。

 ただ当然ながら、チームで一番の点取り屋となるためには、個人の得点技術が求められます。シュートの上手さやディフェンスを抜き去るスピードはもちろん、時にはゴール下で真っ向勝負で点を取りに行く事もあるため、ある程度のパワー、体格、スピード、技術、それらがまんべんなく必要になります。

 逆に、義務的な役割を免除されたポジションである事から、体格もスピードもない選手が消去法でSFスモールフォワードになる事もあります。NBAだと運動能力で劣る白人のSFスモールフォワードに多いパターンです。このタイプの選手はたいてい3Pシュートを得意技とし、コーナーから、あるいはスクリーンをかけてくれる味方と連携したセットプレイからのシュートで点を取る役割をほぼ専門的に担います。


 さて、ここまでSFスモールフォワードの点取り屋としての特性を紹介してきました。

 ですが前述の通り、SFスモールフォワードはオールラウンダーのポジションとも表現される事があります。点を取る事に専念するポジションじゃなかったのかよって感じかもしれませんが、まあ聞いてください。

 これまでSFスモールフォワードが点を取りやすいポジションである事をお伝えしてきました。しかしその本質は、「SFスモールフォワードとは、義務的な役割に煩わされず、自由に動けるポジション」であるという点にあります。

 Gガードのように速攻戦に参加する義務がなく、PFパワーフォワードCセンターのようにリバウンドに参加する義務もない。

 裏返せば、Gガードのように速攻戦に備えて後衛で待機している必要がなく、PFパワーフォワードCセンターのようにリバウンドに備えてインサイドに留まっている必要もないのです。

 そのため、得点力だけでなく、走力、体格、パワー、ジャンプ力、そしてそれらをフルに活用できる状況判断力とスタミナを併せ持っているSFスモールフォワードは、その時々で人が必要な場所へ東奔西走し、まさしく一人で何でもやってしまいます。

 速攻戦の人数が足りない時は擬似的な3人目のGガードとなり、リバウンド争いが不利な時は素早くゴール下に入ってリバウンドに飛び込み、当然ながら点も取る。まさしくオールラウンダー。中にはゲームメイクまでこなしてしまう選手もおり、"味方に指示を出す前衛ポイントフォワード"などと呼ばれたりします。これはポジション名と言うより、一種の称号のようなものです。


 まあ実際には点取り屋かオールラウンダーかというのは、1か0かというような極端な話ではないと筆者は考えます。

 たいていのSFスモールフォワードは点を取りに行きながらも必要に応じてその場その場でできることをしています。その"副業"の仕事ぶりが素晴らしければ傍目にはオールラウンダーと映りますし、さほどの活躍でなければ点を取る事を専門とした選手に映るのでしょう。


 さてそれでは総括です。SFスモールフォワードとは、

 ・もっとも自由に立ち回る事ができ

 ・自由さを活かして効率よく点を取りやすい存在であり

 ・多彩な得点手段を実行するためにバランスの良い能力とそこそこの体格が求められ

 ・場合によっては自由さゆえにオールラウンダーにもなりえる存在

 です。


 スラムダンクで言う流川楓のポジションだけあって、花形ポジションという印象の強いSFスモールフォワード。その本質は自由さと、それを活かせるだけの個人技に支えられているというお話なのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る