主人公が電車に乗ると、駅から見えるマンションのドアの前で美しい女性が手を振ってくれる。
そして、もうひとつ。駅の近くでたまに見かける黒猫には、なぜか「三毛猫」のタグ。
これはいったい、どういうことなのだろう?
日常の風景と、そこにあるちょっとした謎。主人公の学生時代のささいな事件。そして、小さな棘が刺さったような後悔。
そんなものが淡々と描かれているのですが、ついつい先へ先へと読んでしまいます。
そして、ラスト。すべてのピースがパチリと嵌り、一気に謎が解けたとき。まるで、じとじと降り続いた雨があがって、スカっと空が晴れ渡ったような爽快感です。
主人公はある周期で嫌なことを思い出す。しかしそれを過ぎれば、会社の中でも社会の中でもそれなりに上手くやっていた。しかし野良猫である黒猫は、主人公にとって、「孤独」と言う点で共感できる存在だった。しかしその野良猫に、ある日首輪がついていた。首輪には「三毛」とある。黒猫に三毛という名前はいかにもおかしかった。
そしておかしな出来事と言えば、マンションの玄関先で主人公に手を振る女性がいる事だった。主人公が通勤で使う電車に向かって、美女が手を振る。一体何故だろう。
ささやかな日常に潜む謎は、同級生の男によって思わぬ方向へ動き出す。
そして、ラストで全ての伏線が一気に回収されることとなる。
何故、女性は主人公に手を振ったのか?
何故、黒猫なのに「三毛」なのか?
そして、主人公が思いだす嫌な記憶の正体とは?
是非、御一読下さい。