メシルフロカ

安良巻祐介

 食用に供すべき「光」をとうとう見つけたと往来に飛び出して叫んだ狂学徒は、輪転発光式の宣伝機械をぴかぴか廻し鳴らして手製のおらび唄をがなり立てるというやかましすぎるアツピイルを繰り返していたその場で、駆けつけた警邏隊に取り押さえられ病院送りになってしまった。

 しかし後日、彼の棲んでいた一つ家の捜索において、よく使い込まれたランプの火屋が割れ、甘いえもいわれぬ薫りが漂っているのが見つかり、さらにはそのランプの残り火を目にしただけで脳に味を感じたと証言する者まで出てきて、一転大騒ぎとなった。

 隔離病棟に移された学徒の元へと詳しい話を聞き出すため人が遣られたが、あわれ一足遅く、病棟に移されたその日に彼はさっさと尋問解剖されて臓器売買に捧げられてしまっていた。

 手が早すぎると批判された担当医はのらくら肩をすくめながら、そう言えばやつのはらわたはみな蛍石フロオライトのように淡く光っていやがったなあ…としみじみ呟いたそうだ。

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メシルフロカ 安良巻祐介 @aramaki88

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