第16話 武具を知る

 工房の鍛冶室には、いたるところに剣や鎧など所狭しと並べられていた。師匠はその中から適当に見繕って私の前に並べる。一体、何が始まるのだろう。


「これらの武具の鑑定チェックをしろ。無論、ただ目視するだけでない。材質は何か、どんな特性を持つか、お前なりの考えを聞かせてみろ。まずはこの手甲アームからだ。」

 そうして、二対の手甲が手渡される。まず、目視してみる。傷などもないし、銀白色に輝くすばらしい手甲だということが分かる。そして、大きな特徴はその手甲自体が持つ魔力だ。傷一つも無く、魔力にあふれている金属といえば

「ミスリル手甲アーム…ですね。ミスリルの純度も高く、傷をつけることは困難ですし、これ自体に魔力を施して、相手の下位魔法程度であれば受け止めることもできるでしょう。」

「ふむ、及第点だな。やはり、お前はミスリルに対しては他とは違う物をもっているはずだ。さて、次はこれだ。」

 

 そう言って渡されたのは、黄金色こがねいろに輝くヘルムであった。やはり、私は目視してみる。色からすると金のようにも思えるがそれだけでないようだ。

「軽く叩いてみてもいいですか?」

「あぁ、かまわん。」

 手近にあったハンマーで軽くトントンと叩いてみる。すると、ヘルムはハンマーを弾くというよりも、一度それを受け止め元に戻るという感じだった。

「さて、どう考える?」


 私は持ちえる知識をフル動員させて答える。

 これだけの復元率をもつ金属は、そう多くはない。

「主な材質は金。それにスーパーアロイである『ダマスカス鋼』も混ざっているように思います。その特徴は粘度の高さ。

 金もダマスカス鋼も粘りが強く、柔らかいのですが、それと同時に元に戻ろうとする力も強いはずです。

 斬撃はともかく、打属性の攻撃では大したダメージを与えることができないでしょう。」

「ほう、ダマスカス鋼を知っていたか。武器に使用されることが多いが、防具に用いればそういった特性を得ることも出来る。」

 概ね、間違っていなかったことにほっと胸をなでおろす。


「最後にこれだ。」

 そう言って渡されたのは、波のような形をした切刃を持つ一振りの剣だった。まず、感じたのは大きな炎の魔力。思えばこの波の形は炎が燃え盛る形を彷彿とさせる。炎属性の剣と言ったところか。


「見るのは初めてですが、これはですね。既に、炎属性も付与されていることから、やはりミスリル製かと。」

「その通り、これはフラムベルジュだ。炎属性が付与されているミスリル製。ゆえに一介の剣士では扱うことも難しいだろう。」

 ふう、なんとか間違えずに答えることが出来た。


「ついでに、フラムベルジュが何故このような形をしているか知っているか?」

 難しい質問だが、何かの本で読んだことがあるのを必死に思い出す。

「波状の形をしたこの切刃で切りつけると、傷口の深さがその場所によって異なり、修復することが難しくなります。

 を追求した剣なのではないでしょうか?」

 

「うむ、その通りだ。なるほど、戦闘は苦手としていてもこっちの分野では、そこそこ使えるようだな。」

「ありがとうございます、師匠」

 私の知識がうまく活用できたことに私自身満足し、お礼を述べる。


「さて、今日一日でお前の特性と言うものも理解できた。これからお前がすべきことは一つだ。」

「それは一体?」

 なんだろう?早速、鍛冶を教えてくれるのだろうか?

 そう思うと、期待に胸が膨らむ。


身体的フィジカルトレーニングだ。」

 しかし、私の期待は叶わなかった。

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