第15話 叱責
「遅くなっちゃったなぁ。」
師匠の鍛冶工房に帰る頃にはすっかり夜も更けてしまっていた。戦果は20体には届かないもののスライム12体、ワーム6体の計18体。初めての課題にしてはまずまずなんじゃないかと自負している。
これで杖があって、魔法での退治であればもっと早く達成できたのだと思うけど、それを言っても仕方がない。もう魔術師じゃないんだ。とにかく、一刻も早く師匠に戦果を報告せねば。そう思い、工房の扉を開く。
「ただいま、戻りました。」
「遅いっ。」
ピシャりと師匠の言葉がこだまし、私は身を縮こませる。
「モンスター20体にどれだけ時間をかけるんだ。」
「す、すみません。」
思ってもいない言葉に私は条件反射的に謝る。
「しかし、お言葉ですが師匠。ダガー一本では、これくらいの時間になっても仕方が無いかと。」
「『ダガー一本』な。
まさか、そのままダガーとして使ったわけではあるまい。」
「え、あ、それは…。」
どういう意味ですか?とは続けられなかった。
「お前にしては、勘が悪いな。その様子だと、ただのダガーだと決めてかかっていたんだろう。よく観察してみるがいい。」
私はダガーを取り出し、師匠の言うように観察してみる。
ただの鉄のダガーにしか見えなかったが…。
さらによく集中して観察するとほんの少しばかり魔力を感じる?
それって…。
「阿呆。やっと気づいたか。そのダガーの芯にはミスリルを用いている。ダガーに魔力を通して
それをしなかったというのは、なんともお粗末だな。」
「す、すみません。気づきませんでした。」
「二つ、お前に忠告しておこう。
一つ、鍛冶師たるもの武具のチェックは怠るな。
その武具がどんな性質を持って、どう使うのかよく考えろ。」
「は、はい!」
「二つ目だ。魔術師ではないと言ったが、魔法を使うなとは言っていない。
そもそも、魔法鍛冶師だ。杖が無いから魔法が使えないなんて思うな。
魔法と武器どちらにおいてもスペシャリストになることを念頭に置け。」
「はい!ありがとうございます。」
師匠の言葉は厳しかったが、初めて教えらしい教えを受けた。特に渡されたダガーのチェックを怠るなんて全く私の
「それで、今日はもう自室に戻ってもかまわないのですか?」
「いいや、これから武具の
「え、今からですか?」
もう夜も更けてしまっている。正直、モンスター討伐の疲れが残っているし、本当はこのまま眠ってしまいたいくらいなのだが…。
「不服か?しかし、ならん。『鉄は熱いうちに打て』。これはドワーフ鍛冶も魔法鍛冶においても同じことだな。ダガーのチェックを怠った罰だと思え。」
「はい、師匠」
師匠と私は工房の中核、鍛冶室へと入る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます