第14話 初討伐

 私は木々が鬱蒼と茂る山を一人、探索していた。

「それにしても…、はぁ、魔法鍛冶については、はぁ。そう簡単には教えてくれないか…はぁ。」

 久々の現地探索フィールドワークで私の息もすっかり上がってしまっていた。魔法鍛冶の弟子というからには、何か金属の変成法でも教えてくれるのかと思っていたが、単純な肉体労働ばかりで、気持ちも少し萎えていた。

 

「(弟子になるの早まったかなぁ。)」と、心の中でひとりごちる。いやいや、サーシャとも学園とも決別したんだ、そう簡単に諦めてたまるか。と気持ちを改める。

 

 ついでに言うと、家族には昨夜電話で「今日は工房に泊まる。もし、明日帰らなかったら魔法鍛冶師の弟子になる。」と伝えてある。

 電話に出た母親は驚いていたが、それを聞いた父親が「最後までやりぬく覚悟がある場合のみ、弟子になることを許す。」という判断だった。

 もともと、魔法学園を卒業したとて魔術師になるつもりも無いことは親も知っていたし、私のやりたいことを尊重してくれる理解ある両親だ。

 

 それにしても、武器がダガーだけとはなんとも心許ないものだ。法衣ローブはまだしも、杖の携帯を許してもらえなかったのは意外だった。

「お前は今日から魔術師ではない、魔法鍛冶師だ。そこをはき違えるなよ。」…か。そもそも魔法鍛冶師って何すればいいんだろう。せめて、それくらい聞いておけばよかった。


「がさがさ」

「!?」

 何かの気配がする。そもそも、モンスターの討伐が師匠から課せられた課題だ。モンスターがいてもなにもおかしくないし、私はそれを倒さねばならない。そうして現れたのは「スライム」だった。


「スライムだったら、学園の実技で倒したことがある。弱点は炎属性…。でも、杖が無いから魔法は使えない。か。」

 考えても仕方が無いので、スライムの死角に回り込み、勢いをつけダガーで切りつける。が、切ったそばからその傷は修復され、まるでダメージになっていない。スライムからの反撃は遅く、なんとかかいくぐることはできるが、こちらに有効打もない。

 

 少し距離をとって、あごに手を添えて考える。

「確かスライムは魔法生物族。『核』になる魔力源を動力にして動いている。それを壊せば生命活動を維持できなくなるはず。」

 「核」となる部分が無いか、観察する。以前までなら周りの粘液ごと炎魔法で蒸発させていたので気づかなかったが、どうやら、のようなものがスライムの体の中を行き来しているようだ。そして、おそらくあれが「核」。

 

 あれを壊せば!


 私は一足でスライムに近づき、その珠めがけてダガーを突き入れる!

「てぇえい!」

 うまく、珠に当てることが出来たようだ。ダガーからは、今までの感触とは違う「ガリっ」とした抵抗を感じた。「どぱぁ」という音と共に派手に粘液を撒き散らし、スライムは倒れた。

 

 「よしっ」

 小さくガッツポーズを決める。時間はかかったが何とか仕留めることができた。おそらく、次からはもっとうまく対処することができるだろう。そう思い、私は山の中を歩み始める。

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