第3話 魔法応用学概論(補習)

「どんな金属でも…ですか。」

「と、言われている魔法鍛冶師だそうだよ。

 まぁ、そんなのは本来ことなんだけどね。」

「はぁ、そうですか。」

 

 何だか、相談に来たのに新しい疑問が生じてしまった。

 そんな様子を見抜いたのか、先生は口を開く。


「せっかく来たのだから魔法鍛冶について詳しく話そう。

 もともと、その相談に来たのだしね。」

「あ、はい。お願いします。」

「うん。まずはドワーフ鍛冶と魔法鍛冶の違いから説明しよう。

 それらの最も大きな違いは扱うことの出来る金属の種類にあるといえる。

 ピッピ君はドワーフ鍛冶のことをどれくらい知っているかな?」

 

 私は今日聞いた魔法応用学概論の内容を思い出しながら答える。


「大きな炎を焚き、金属を高温に熱して叩き鍛えることで、剣や盾などに加工していく技法ですよね。」


「うむ、まさしくその通りだ。

 しかし、この方法では扱うことの出来ない金属が存在する。

 『オリハルコン』や『アダマンタイト』、『ミスリル』と呼ばれる希少金属。

 総称して『スーパーアロイ』のことだ。

 さて、これら『スーパーアロイ』に共通している特徴とはなんだろう?」

 

 どうやら先生は、その都度に私に質問を呈することで理解力を確かめているようだ。だとすると、私はそれに応えるべきだ。


「『スーパーアロイ』は非常に高い硬度を持ち、それらで作られた武具は決して砕けることがないと伝えられている金属です。

 魔力耐性も非常に高く、ドラゴンの炎でさえも弾き返すとか…。」

 私は金属に関する知識をフル動員させながら答える。


「そう、が重要なんだ。

 どんな衝撃にも炎にも耐えられる『スーパーアロイ』を、はたしてドワーフ鍛冶で精錬できるだろうか?

 もちろん、それはね。」

「えぇ…。」


 確かに今まで疑問に感じていた。


 例えば、オリハルコンの防具は非常に高い防御力を持ち、炎耐性にも優れている。しかし、一体それを鍛冶したのはなのだろう?と。

 それを可能にするための、より大きな炎とより強い力で叩き鍛える、というのはどこか無理があった。もっと言えば、していた。


私の疑問を見抜いたかのようにシンドラー先生は続ける。 

「そして、そこで必要になってくるのが『魔法鍛冶』だ。

 ドワーフ鍛冶が熱や衝撃といった外的な要因によって金属を精製する方法だとすると、魔法鍛冶は内側の仕組みそのものを魔術式によって作り変えてしまう方法だ。」

「なるほど…。」


 つまり、どんな硬い金属も、魔法によって内側から変成してしまえば、それはなものになる。と、そういうわけだ。

 しかし、疑問はまだ尽きない。


「それだと、ドワーフ鍛冶は何故、今も残るのでしょう?

 コストや所要時間などを考慮すると、魔法鍛冶のほうが優れていると思います。

 衰えてしまっても仕方が無いのではないでしょうか?」

 私は直感的に思ったことを口にする。


「ふふ、乱暴なことを言うね。でも、もっともな質問だ。

 結論から言うと魔法鍛冶とドワーフ鍛冶はにある。補い合っているといってもいい。」


 魔法鍛冶とドワーフ鍛冶が共存関係?それはどういう意味であろうか。本来なら商売敵ライバルであるとも言えるはずだが…。

 答えの出ない問いに、シンドラー先生が答える。


「それはね、魔法鍛冶師の持つ欠点にあるといえる。

 さっきも言ったようにね、魔法鍛冶師はその特性によって扱える金属は優秀なものでも2、3種類だけなんだ。

 つまり、魔法鍛冶師は特定の金属に対してスペシャリストであっても、鍛冶師としてはしているといわざるを得ないんだ。」

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