最終話 僕と少女の秘密

 ひと仕事終えた僕は、その場に倒れ込んだ。


「お疲れ様、四季島シキシマくん」

「アイヴィーさんもお疲れ様。助かったよ……」

「それはこっちのセリフよ。本当にありがとう。ワタシ一人だったら無理だったわ。彼を止めることも、救うことも……」

「本当によかった……」

「彼からは妖怪の気配がしなくなったわ。【宿妖しゅくよう】の宿主を救えるなんて、ワタシたちにとっては衝撃的だわ」

零鬼レイキがいてくれたおかげだ……。ありがとう」

〈礼には及ばん。四季島ユウを護る。それが今の私の存在理由だからな〉

「その……零鬼ってなんなのかしら……?」

「えっ!? 聞こえてない?」


 アイヴィーさんは首を横に振った。


〈私の声は、四季島ユウにしか届いていない〉

「そうなのか……」


 アイヴィーさんに軽く説明したが、いまいち納得していないようだった。今まで、妖怪と宿主がしっかりと共存している例は聞いたことがないらしい。


「あのさ……」

「なにかしら?」

「よかったら、これからも”妖淘師ようとうし”ってのの手伝いしてもいいかな……?」


 アイヴィーさんはあごに手を当て悩んだ。しかし、答えはあっさりと出た。


「いいわよ」

「やった!」

「でも、あなたの零鬼ってやつが危なっかしいことをし始めたら、容赦なく殺すわよ」

「あははは……。監視も含めてってことね……」


 僕は苦笑いをした。


「ワタシのことはメルって呼んでちょうだい。あ、でも学校では呼ばないで。そういうのに興味がある人が多いから」

「そういうこと……?」

「あー、もういいわ。とにかく学校ではあまり馴れ馴れしくしないこと。いいわね?」

「うん、わかったよ。メル。僕のことはユウって呼んで」

「よろしく、ユウ」


 僕とメルは握手をした。


 メルの秘密。

 僕の秘密。


 この夏は、大変なことになりそうだ。

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僕と少女の秘密 天神シズク @shizuku_amagami

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