独白~愛しい貴方に贈る~

南総 和月

貴方へ



こんなにも愛していたのに

貴方は私を見てくれない


こんなにも傷ついていたのに

貴方は私を癒してくれない


でも、そんな日々も今日で終わり

これからは私だけが貴方の全て


素敵、なんて素敵なのかしら


足元に広がる緋色の海は

私の心に沁みわたるようで


足元に横たわる貴方は

私の身体に溶け込むようで


少し手狭なこの部屋は

おしゃれな家具もないけれど

貴方の最期を飾るには

余りにも質素すぎるけど


いいの、構わないわ


だって私がこんなにも近くにいるのだもの

これ以上大切なことはないでしょう


貴方は私を感謝しているのかしら

それとも憎悪しているのかしら


貴方の最期の言葉を

私は聞き取れなかったわ


ごめんなさいね


それでも私は貴方を救ったわ

間違ったことなど何一つない


貴方が

私と出会って

私と食事をして

私と毎日を過ごして

私と愛を育んで

私から離れて行って


きっと貴方は疲れてしまったの


私が貴方の視界に映らなくなって

私と貴方の時間はもう来なくて


だから恋して

だから愛して


こうして貴方を救いに来たの


貴方を誑かした女も

貴方を苦しめた男も

ここにはいないわ


誰も貴方を救わない

誰も貴方を救えない


だから私が貴方を救うのよ


寂しいかしら

悲しいかしら

心配しないで


私の全てを貴方に捧げる

私も貴方についていく


少しだけ待っていてほしいの

あと少しで終わるはずよ


これから

あの女に連絡して

私たちを見つけてもらわなくちゃ


私はともかく

貴方には最後まで美しくいてほしいの


そうしたら貴方と同じ刃に

私という存在を刈り取ってもらうの









ねぇ愛しい貴方


ちゃんと私は貴方を救えたかしら




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