9. 調書(2)

「レヴィ」についての証言書




 1.

 前の殺人もあいつが犯人なんだろ?

 怖いよな。どこでもトラブル起こしてたらしいし。……俺は会ったことないけど。

 目立つ外見らしいから、よっぽどすぐわかるんだろうなぁ……。

 え?どんな外見?赤毛の大男って聞いたよ。


 2.

 噂の人でしょ?どこかの組織と繋がりがあるとかいう……。会ったことはないけど、危険なのくらい知ってる。

 えーと、20代半ばくらいで……目付きが悪いって。

 ところで、お兄さん今夜どう?サービスしちゃうわよ。エルダは最近見かけないし、今がチャンスよね……あ、こっちの話!


 3.

 レヴィって名前の奴になら前ちょっと会ったけど、あれは別人だろうなー。だって真面目な奴だぜ?サボってる奴いたらちゃんと注意するし、店長や先輩の言うこと真面目に聞いてくれるし……。いい子なのに何かトラブったとかで辞めちまったな。おっと、話がそれた。

 何かあれだろ、やばい人だろ?外見?

 顔に傷あるって聞いた。




 まとめながら頭が痛くなってきた。

 どうやら、「レヴィ」という名前の人物は実在するらしい。リヴァイでもリーヴァイでもリーヴィでもない発音からして、まあ、たぶんそういうことだろう。

 ……けれど、噂の危険人物と言うと、大体皆が口を揃えて「会ったことがないけど」と語る。

 外見に関しては、男性。……以外はほぼ信用ならない。3つ目の証言では顔に傷があると言われていたのに、次の証言。




 4.

 かなりの美形らしいよ!近寄り難さすごいって……。めっちゃ長い金髪で碧眼らしいし!


 ……わかると思うけど、最初の証言で「赤毛の大男」と言われてるのに明らかな矛盾。さらに、


 5.

 緑色の瞳のええと、黒髪で、あれ、茶髪か?……あー、なんか、化け物らしい。本当は人間じゃないって……いや、噂だけど。




 読むだけでイライラした。失礼に程がある。

 彼が一体何をしたっていうんだ。




 ……さて、情報を集めてわかったのは、くだらなさすぎる事実。

「レヴィ」という名前は未解決事件が多い恐怖を落ち着かせるために、民衆が作り上げた偶像。つまり作り話。

 ほっとした帰り際、公園であのチンピラと出くわした。レオと名乗ってるけど、こいつはやけにしつこく絡んでくる。

 当たり障りのない範囲で調査について話すと、顔色が変わった。


「でもよ、そいつってホントにいるんだろ?」


 上手く書き表せないほど、怒っていた様子だった。……つい、逃げたくなるくらいには殺気立っていたように思う。

 その後、アドルフさんに尋ねると、今はまだ調べるな……とのこと。


 レオの言葉は、ある現実を示していた。

「レヴィ」は実在する人物なのに、その名前が示すのが凶悪な危険人物の偶像。そして、「会ったことがない」人だらけ。

 ……それって、本人は……?




 彼らは悔い改めず、諦めない

 罪を、未だに重ね続けている


 ……許さない




 ***




 また変なメールが来たが、どこかで聞いた名前がメインに綴られている。

 レヴィ。確か、「助けて欲しい」って言われていた……ような……?

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