10.捜索開始
結局、朝になってもリトは帰ってこなかった。
連絡がないので、彼がどこにいるのかも分からない。いわゆる、世間一般で言う“行方不明”という事態だ。
ルティリスの不安は胸のうちでさらに増していた。
昨夜はロッシェの言葉に甘えてキツネの姿で一緒に寝たので、ルティリスは別室で人の姿に戻り、いそいそと着替えていた。
土の民として
普段着に着替えたらいつも落ち着いた気持ちになるのに、憂鬱な気分が抜けなかった。
いつもならお腹がすく時間だけれど、今朝は空腹を感じない。重たい気分のまま耳と尻尾を下げて別室を出、食事をとる部屋に入るとロッシェが待ってくれていた。
「ルティリス、朝食を食べたら出かけようか」
深い紺碧の両目が柔らかく細められる。
その言葉の意味がリトを探しに行くということだと察し、ルティリスは目を輝かせ、下げたままだった耳をピンと跳ね上げた。
「はい!」
「まあ、探すと言っても手がかりも何もないし。とりあえず地道に聞き込みをしてみようか」
「ルベルも一緒に探しに行きます!」
朝食の後、ロッシェの言葉を聞きながら出かけるために自分のリュックサックを背負ったルティリスに、ルベルは宣言するように言った。そして、隣にいたセロアも穏やかな笑顔のまま口を開く。
「そうですね。人数の多い方が効率がいいですしね」
彼の柔らかな笑みに嬉しくなって、ルティリスはようやく口元を緩ませた。
続けて、セロアは目を和ませながら提案する。
「では、落ち合う時間を決めましょうか。夕方の六時にここで、というのはいかがでしょうか」
「はい、それで大丈夫です」
ルティリスが頷くと、隣に立っていたロッシェが口を開く。
「僕はルティリスと探すよ。先生はルベルをよろしく頼んだよ」
今日は晴れていて、外も明るい。
ルティリスは部屋の窓から街を見た。
街中の雑踏は多くのヒトたちであふれている。この様子ではリトの匂いを判別することは難しいし、本当に聞き込みに頼るしかないだろう。
時間がかかりそうなロッシェが提案した方法で見つけられるのか内心は不安だったが、仕方ない。手がかりがないんだ。地道に探すしかない。
焦りそうになる気持ちを押しやって、ルティリスはとりあえずできることから始めようと気持ちを引き締めた。
「リトさん、どうか無事でいてください」
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