163:そして、彼の進路も決まったみたいでして。
彼はそのあと、進路が決まったようでした。
私の状況はというと、休学していた大学に戻る準備をしていました。
けっきょく、そのあと。半年ほどはがんばって行ってみて、でもやっぱりだめで、そのまま中退という流れになってしまうのですけれど――。
進路が決まったのだということは、たしかツイッターで知ったのだと思います。
お祝いの言葉も、もちろんかけたと思います。リプライというかたちで。
私は、実情としてはぜんぜん追いついてませんけれど、でもたしかに大学三年生になろうとしていたのでした。
それに対して、後輩くんはこれから大学生になるのでした。
なんといいますか。私が完璧に完全に取りこぼしてしまったものを、後輩くんは、これから取りに行くのです。
大学生活というものを、取りに行くのです――。
……彼は大学になじむだろうか、と、そのときには思ったのか思わなかったのか。
私もたいがい当時は精神的に余裕がなかったので、そのへんの記憶は、正直曖昧にぼやけているのですけれど――。
……でも。
はっきりと、わかることならありました。
私と、後輩くんは。
もう、ずいぶんと離れてしまった。
離れたところにきてしまった。そして、ゆくんだ。たぶん、お互いが。
あの、学園での思い返せばすばらしかった生活からも。
高校時代にたまに交わしたメールや、たったいちどだけ職員室の前の自習スペースでふたりきり、話し込んだことからも。
卒業直後からはじまったなんだか奇妙にでも親しい空気の流れるふたりでの食事の時間からも、ツイッターで夜な夜などうでもいいようなリプライを交わしあうことからも、……ちょっと、本音がはみ出ちゃったようなスカイプの会話とかからも。
そして、彼の地元駅を案内してもらったという、やっぱり奇妙で、どこかちょっと気まずくて、でも、光のあんなに眩しかったあの時間からも――。
遠ざかっていくんだ。
遠くなって、いくんだ。
私は、そんな感傷を、鈍く、感じていたように思うのです――。
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