107:改札前で、待ち合わせ。

 お互いわりと日程を合わせることができて、メールからそう間が空かずに会うことができるようになった気がします。

 私はもちろん向こうの彼女さんのことを気にしながら誘いました。そう、あのときはまだ彼氏は私の彼氏ではなく、後輩ちゃんの彼氏さんだったのです。いくら私と後輩ちゃんが仲がよいとはいえ、やはりわずかでも不快にさせるようだったら、私は身を引かなくては。

 けども後輩ちゃんは行ってきていいよと言ってくれたそうです。「菜月先輩なら、ぜんぜんいいよ。私たちのキューピッドの先輩に、よろしく!」みたいなことも言ってくれたと聞いたような記憶があります。

 信頼ってすごいものだなあと、ほっと息をつくのと同時に――あのときからただなんとなく後ろめたく、ほんのちょっとだけ部屋の物を壊すような自分だけに向く暴力みたいな感覚に似ていたのは、たぶん、……こうしてあとにならないと、わからない気持ちだったと思うんです。



 もし、あのときから、私が彼を好きだったなら――って、そういうことなのですから。



 ……そして、晴れて彼女さんの許可も得て。

 私たちは、私の実家の最寄り駅の改札前で待ち合わせして、会いました――そこは、そのあとつきあいはじめてからも私たちの待ち合わせの場所になります。そんなことは、そんな未来は、まだ知らずに、つゆ思わずに――。

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