93:彼ともし同級生だったらな、っていう空想。

 ただ当時の気持ちを端的にあらわしている記憶もひとつ、確実にあって。



 このまま留年したらどうなるんだろうなあ、って。そういうことを、あのころは心のどっかでいつも思っていた気がします。



 私は高校二年から授業をサボりがちになってしまったせいで、出席日数がギリギリでした(遅刻三回で欠席一回ぶんに相当するという出席システムだった)。高三に進級するときも、あと三回遅刻したら留年ってところを、ほんと担任の先生はじめ学校ぐるみであれこれ調整くださって、どうにかこうにか進級させていただいた感じでした(ほんとうにありがとうございます……)。


 いまはほんとうに感謝してるんですが、まあしかしあのころの私はしょせんは未熟な高校生。高三になっても懲りずに遅刻や保健室や早退を繰り返してました。なぜか欠席することはあまりなかったんですけどね。ただ、一日フルに学校にいる日は、ほとんどありませんでした。

 実際にメンタル面の問題とかもあったので、一概に怠惰のせいかと言われれば、まあそうではないのかな……と思うんですけど。とにかく事実としては、私は高三になってもそんな調子だったので、受験の前にそもそも卒業できるのか、とくに先生方からはいつも危ぶまれていたわけです。



 なので留年っていうのがほかの生徒に比べると、比較的、現実的でした。

 もちろん、もちろん留年なんかできない、私立の学園だしそんなことになったら学費がもう一年ぶんかかってしまうしそれを払うのは私ではない、それに大学に進むのも社会に出るのも一年遅れる――だからほんとうに馬鹿馬鹿しい、ただの空想、いえ妄想なのだとわかってはいました。




 それでも、考えずにはいれなかったのです。ひとつ下の代の彼らと、――彼ともし同級生だったら、って。そんな、考えても詮無いことを。

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