92:彼はよくメールに電球をつけていましたね。

 このころの彼とのかかわりといえば、なんでしょう、文芸部の部室でときどき会うことと、あとはちょっとしたメールですかね。

 在学中にはまだスマホがなかった時代ですので、携帯電話のメールの一斉送信で部活の連絡をしてました。個別に返信が来るそのときに、ひとことふたこと、あるいは三言みことくらい、やりとりをしたような気はします。


 あまり内容は覚えてないのですがまあほとんどがふだんのダル絡みの延長線上だった気がします。

 内容は覚えてないですが、よく覚えているのが、彼がメールの時代にはよく電球マークを使っていたことですね。なんだったんだろう、あれ。いや、わかるんですけどね、なんか彼がそういうの使うっていうのはわかるんですけど。

 理由を訊いてもよくわからないけどみたいな答えだった気がするしなあ……まああの時代には彼が彼自身のことをわかってなかったらしいから、仕方ないですよね……うん……メールに電球をつけそうなひとってことは納得できるので、もうそれだけでいいですけど!!



 まあ、だから、なんというのかな。

 やはり、物理的な距離は広がる一方だった気がするんです――私はなんとなく、漠然とした喪失感と後悔を、やはりもち続けていたんですし。

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