94:彼はうまく部活を回していたようですね。

 栓無い思いを抱えた私は、彼や例の後輩の女の子、そして彼の代やそのもっと下の代を、なんとなく物理的に避けはじめた気がします。

 事実、彼にとってはかなり印象深かったらしい彼が高二だったときの舞台のこと。ほんとうのことを認めてしまうと申しわけないことに、私はほとんどそれを覚えてないのです。

 彼が一年生のときのことはかなり覚えているのですから、やはり私は高三になったらあきらかに、その、なんというか、そういう感じになっていたのでしょう。


 彼はかなりうまく部活を回しているような印象がありました。

 もうぼんやりさんでもなかったし、もう高校生活が淡く心配なんてこともなかった。私から見ていると、たぶん、学園に馴染んだことにはそれなりに自信のあった私よりも、ずっと、ずっと、馴染んでいました――。


 ちょうどほんとこの間のことなのですが、彼は彼で担任の先生に部長になったんですけどと相談をして、いろいろとアドバイスももらっていたらしいですね(そして彼はその先生からそれまで名字にくん呼びだったのが、下の名前の最初のひと文字プラス「ちゃん」呼びになったらしいです。私はすさまじく笑いました)。

 なんか、当時はぜんぜんそう見えなかったんですけど、やはり彼も先生に相談とかしてたんだなあ……って……。いやそれはね、そうなんですけど。彼はね、そういうのしないようでいて、意外と然るべき相談先や相談案件の判断がつく、なんとなく、私はずっとそんな印象があるのですけど――。

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