最後の最後まで「先輩後輩」だった学園生活
91:受験まではあっというまでした。
彼と出会って二回目の夏、秋、そして冬。
それらは、すくなくとも私にとってはひと続きで、すさまじいスピードで過ぎてゆきます。彼にとってはそうでもないのかなとは思ってます。高二で、部活で役職ももてば、それはずいぶんとやることがあり、多分に充実するはずですから。
私はこのころほんとうに忙しかったです。はい。忙しいって言葉を自分自身が使うのが私は大嫌いなんですけど、振り返ってそう思います、だって漢字の通り心をなくしていたから。
夏に入り、勉強時間は一日平均十時間を超えました。でもほんとはもっとやらなきゃいけなくて。毎日毎日、過去問を相手にするだけで、高校生活最後の暑い夏も、二学期も、三学期も過ぎ去ってゆきました。
それにいま思えば、あれは時間だけかさばってあまり身にならない勉強法でした。だからなおさら、苦しかったのでしょう。
忙しいくせに、一日一日はとても薄かった気がします。高一と高二のときには毎日毎日あんなにぎゅっと青春を煮詰めて凝縮したような日々が、とことん希釈され、ゆるゆると流動食のように流れていくだけの毎日でした。
そんななかでも文化祭はあったはずで。部活はある程度下の代に任せましたが、クラスでも出しものをしたはずです。クラスTシャツを着て、クラスの友達とぴっかり笑う当時の写真がいまも手元に残ってます。
部活ひと筋だった私ですが、高三のこのころになると、クラスの特性の関係(進学を意識したクラスだということ)もあり、三年間も毎日いっしょだったのにそれまではあまり馴染みのなかったクラスメイトとも、なんとなく気安さを覚えていました。
とかく、部活から離れたという事実が悲しくて、切なくて、喪失感がすごくって――そういうのを紛らわせるように、「早く次のステージに行かなきゃ」と、受験勉強をがんばっていた気がします。
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